表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
35/43

第七話 騎士団長と畑のおっさん

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。

機兵、遺跡、秘密基地。

好きなものを全部詰め込みました。

 畑の脇に置かれた丸太へ腰掛けながら


レオンは大きく息を吐いた。


目の前ではレンが何事もなかったように


畑仕事へ戻っている。


再会したというのに。


五年ぶりに同じ世界へ転移した仲間を見つけたというのに。


 反応が薄い。


「お前、もう少し感動しろ」


「面倒だ」


 即答だった。


「変わらんな」


「そっちもな」


レンは土を耕しながら答える。


レオンは苦笑した。


確かに変わっていない。


ゲーム時代もこんな感じだった。


レイド攻略の話をしても。


最強装備の話をしても。


ランキングの話をしても。


こいつだけは興味を示さなかった。


代わりに。


工房。


生産。


拠点。


結界。


そんな話ばかりを詰めてくる。


ほとんどのプレイヤーは


課金で済ます話題


そして気付けば誰よりも長時間ログインしている。


戦闘が花形のこのゲームの中で


こいつだけはやりこみの方向が違う。


レオンにとって意味の分からない


無駄の塊のような男だった。


「で?」


レンが言う。


「何しに来た」


「本当に確認だけだ。全部ではないが、腑に落ちた。」


「暇なのか」


「騎士団(我々)は忙しい」


「なら帰れ」


レオンは笑った。


このやり取りも懐かしい。


転移してから五年。


ようやく地球の話ができる相手を見つけたというのに


本人は相変わらずである。


「お前は何してた?」


「見て分かるだろ」


「畑以外だ」


「孤児どもを拾ったな。」


「その前は?」


「畑」


「その前だ」


「この辺を切りひらいて」


「その前。」


「家を作った」


「その前・・」


「結界張った」


レオンは頭を抱えた。


答えが端的過ぎて


面倒がにじみでている。


レオンは森の家を再び眺める。


この異常な拠点。


これは確かにこの男の作品だ。


「この拠点、王都の施設より出来がいいぞ」


「そうか?」


「そうだ。大体、ありえん。」


レンは首を傾げる。


本気で分かっていないらしい。


「お前、自分がどれだけおかしいか分かってるか?」


「知らん」


「そうか」


知っていた。


だからこそ面倒なのだ。



そこへ駆け寄ってくる足音が聞こえた。


「レオンさん!」


レオだった。


朝の鍛錬を終えたらしい。


額に汗を浮かべながら走ってくる。


「また来たんですか!」


「ああ」


「稽古してください!」


「元気だな」


レオンは笑う。


レオは素直だ。


気持ちが良いほど真っ直ぐだ。


「昨日教えたことは?」


「相手を見る!」


「よし」


少しだけ剣を交える。


木剣が鳴る。


数分後。


やはりレオは転がっていた。


「くそっ!」


「昨日より良い。」


「本当ですか!?」


「ああ。」


レオの顔が明るくなる。


単純だ。


だが嫌いではない。


騎士団にもこういう若者が欲しい。



昼過ぎ。


レオンは立ち上がった。


「そろそろ戻る」


「そうか」


レンは畑から顔も上げない。


帰る客への態度ではなかった。


「お前も王都に来い」


レオンが言う。


「断る。」


即答だった。


「まだ内容を言ってない」


「面倒そうだから嫌だ」


「たしかに面倒だな」


「なら行かん」


話にならない。


昔からそうだった。


レイドもイベントも


無理やり連れて行かなければ来ない。


なのに来たら来たでそこそこ活躍する。


扱いの面倒な男だ。


「最近妙な事件が増えている」


レオンの声が少し真面目になる。


「大型魔獣の活動」


「古代遺跡の異常」


「王国外の動き」


「色々だ」


レンも手を止める。


少しだけ。


本当に少しだけ。


「それで?」


「今度皆で集まる機会がある。」


「誰が?」


レオンは答えた。


「ミスト」


レンの眉が動く。


「バルド」


今度は露骨に嫌そうな顔になった。


「あと俺だ」


「帰れ」


「まだ何も言ってないのだが・・」


「帰れ」


レオンは笑った。


反応で分かる。


覚えているらしい。



その時だった。


森の入口から複数の声が聞こえた。


「戻りましたー!」


リアだった。


その後ろにはトトとルウ。


さらに買い出し帰りのカイル達もいる。


皆が荷物を抱えていた。


そして。


レオンを見つけて足を止める。


「また来てたんですね」


リアが言う。


「わるいな」


レオンが笑う。



少しして。


全員が集まった。


レオンも帰る前に簡単な挨拶をすることになった。



「そういえば」


リアが首を傾げる。


「結局、レンさんとどういった知りあいですか?」


レオンは一瞬だけ考えた。


「そうか」


「まだ名乗ってなかったな」


レオも身を乗り出す。



「俺はレオン。この国の王国騎士団長だ。」


全員が固まった。


「え?」


 リア。


「は?」


 レオ。


「えっ?」


 トト。


「騎士団長?」


 カイル。


「偉い人ですか?」


 ルウ。


「めちゃくちゃ偉い。剣帝の人!」


「町の噂で少し聞いた!!」


 トトが即答した。


 レオンは苦笑する。


「お・おおおおおおぉぉぉ!!」


レオの目付きがあからさまに変わる。


反応はだいたい予想通りだった。


「それと、近いうちに会うことになる」


「王都にある王立学術院長と」


「東部砦の英雄。辺境伯」


今度は全員が沈黙した。


知らない名前ではない。


王立学術院。


王国最高の学術機関。


辺境伯。


国有数の大貴族。


どちらも子供達でも知っている。


町へ行ったらなんとなく皆噂にしている


有名人たち



「待ってください」


カイルが言う。


「なんでそんな方々が?」


レオンは肩を竦めた。


「王都で二人に合わせたい。」


「二人も会いたがってたしな。」


「誰に?」


レオが聞く。


レオンは迷わず答え


「お前たちの保護者にだ」


全員の視線が集まる。


畑のおっさんへ。


本人は何事もない顔で土を耕していた。


「レンさん」


レオが言う。


「もしかして凄い人なのか?」


「違う」


即答だった。


「おれは、森で暮らす畑のおっさんだ」


「謙遜するな」


レオンが呆れる。


「世界で一番面倒な畑のおっさんだろうが」


子供達は顔を見合わせた。


「それは、わかるかも。」



騎士団長。


学術院長。


辺境伯。



国の中枢にいる人物達が。


森で畑を耕す男に会いたがっている。


その事実だけで十分だった。


もしかすると。


自分達が思っている以上に。


レンという人間は。


とんでもない人物なのかもしれない。


そんな疑問が。


初めて子供達の中に芽生え始めていた。


読んでいただきありがとうございます。

面白かったら評価、ブックマークで応援していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ