第六話 変な亀
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
今回より、1体ずつ機体図鑑をあとがきに入れました。
(ネタが続くまで2話ごとに1体ずつ挟んでいきます。)
1章のwikiと合わせて世界観や、強さをなんとなく楽しんでもらえたらうれしいです。
南辺境都市へ戻る街道。
レオンは馬をゆっくり進めていた。
夕日が森を赤く染めている。
普段なら気にも留めない景色だった。
だが今日は違った。
頭の中に妙な引っ掛かりが残っている。
「変な場所だったな」
誰に聞かせるでもなく呟く。
最初に思い出したのはレオだった。
十三歳。
まだ子供だ。
剣の腕は未熟。
経験も浅い。
だが負けても折れない。
言い訳もしない。
悔しさを隠そうともしない。
ただ強くなりたいと思っている。
あの年齢では珍しい。
騎士見習いですら、あそこまで真っ直ぐな者は少ない。
少しだけ昔を思い出した。
ゲームを始めたばかりの頃。
強くなりたくて必死だった頃を。
だが。
レオンの違和感はレオではなかった。
もっと大きなものだ。
森の家。
あの違和感だらけの建物だった。
森の奥地。
本来なら人が住み続ける場所ではない。
結構危険な魔獣もいる。
物流もない。
木々も雑多で、開墾、農業にも向かない。
普通のやつが開拓地としては選ばない。
なのに。
あそこには全てが揃っていた。
畑。
水路。
倉庫。
工房。
薬草畑。
家畜小屋。
住居。
そして防衛設備。
必要なものだけが配置されている。
無駄がない。
騎士団長として様々な砦を見てきた。
辺境伯の城。
軍の前線基地。
王都防衛設備。
だが。
あれほど合理的な拠点は見たことがない。
軍事拠点ではない。
農場でもない。
研究施設でもない。
避難所でもない。
なのに全ての役割を兼ね備えている。
まるで。
長期間の孤立を前提として設計された拠点。
あるいは。
ゲーム時代に見たプレイヤー達のギルド拠点のような。
そんな印象だった。
◇
そして、結界。
あれが一番おかしい。
森へ足を踏み入れた瞬間から感じていた。
魔獣を寄せ付けない制御。
外敵への警戒機能。
周辺環境への干渉。
単純な防御結界ではない。
複数の術式が重なり合っている。
王都でもそう簡単には作れない。
少なくとも辺境の農家が持つものではない。
「何なんだ、あの家は」
思わず漏れた。
理解できない。
だが。
どこか懐かしい。
そこで。
昔の記憶が蘇る。
◇
ゲーム時代。
プレイヤー達は拠点を作った。
防壁を作る。
倉庫を作る。
工房を作る。
生産設備を作る。
効率を追求する。
安全性を追求する。
快適さを追求する。
そして。
誰よりもそれに熱中していた変人がいた。
レベルあげやランキングよりもロマン。
協調性がなくいつも一人。
周囲がレイド攻略に熱中する中。
そいつだけは別の方向へ走っていた。
「まさかな……」
レオンは苦笑した。
お互いの認識は機体の特徴やゲームの中のイメージで
リアルにすると、なかなかに紐づけては考えられない。
ましてプレイ中に話すことなどほぼない。
だが。
結界。
工房。
農業。
自給自足。
人材育成。
全部あいつならやりそうだった。
さらに。
別の記憶が浮かぶ。
◇
大規模レイド。
全滅寸前。
誰もが諦めた瞬間。
黒い魔核機が、己を砲弾にするかの如く
飛んで突っ込んでくる。
結界を何重にも展開しながら突撃する異常者。
防御を攻撃に変える発想。
『なんだあれ!?』
誰もが叫んだ。
◇
レイドボスは一瞬怯み、この黒い機体をターゲットする。
プレイヤー名。
レン。
職業。
結界士。
「いや……」
レオンは笑う。
◇
「あり得るな」
むしろ。
こんな意味不明な拠点を作る奴を他に知らない。
◇
翌日。
レオンは再び森を訪れていた。
騎士団長としてではない。
ただ確認したかった。
結界を抜ける。
やはりおかしい。
改めて見ても。
完成度が高過ぎる。
そして。
畑に人影を見つけた。
作業着姿。
日に焼けた肌。
少し伸びた髪。
どこにでもいそうな男。
王国を揺るがす事件の中心人物には見えない。
英雄にも見えない。
騎士にも見えない。
◇
ただの農夫だった。
だからこそ。
余計におかしい。
「また来たのか?何しに来た」
男が振り向きもせず言った。
レオンは少し笑う。
この空気。やはり、妙に覚えがある。
「確認だ」
「お前」
男の手が止まる。
数秒の沈黙。
「誰だ?」
「忘れたか?」
レオンは笑った。
「黒い魔核機でレイドボスに突撃したことは?」
レオンの言葉に男の肩がぴくりと動く。
「結界を盾じゃなく武器にしていた奴だ」
さらに沈黙。
「変な亀職だったな」
ゆっくりと男が振り返る。
そして。
心底嫌そうな顔をした。
「ああ……」
「俺の知る、お前は赤い髪だったはずだが・・」
その瞬間。
レオンは確信した。
◇
やはりそうだ。
昔と変わらないマイペースな雰囲気。
意味の分からない生産馬鹿。
そして、こいつこそが、世界を勝手に変えている男だった。
「久しぶりだな。髪は変装用に染めている。」
「こう見えても有名人だからな。」
「・・・・全然嬉しくない」
逢った感想が即答だった。
レオンは大笑いした。
その反応だけで十分だった。
目の前の男が。
間違いなくレンであることを確信できたからだ。
レオンはこの出会いに
今まで自分が持っていた
違和感
疑問
全てではないが、納得できる答えと
同郷に合えた嬉しさで、内心ひと時の安らぎを得る。
【機体図鑑 No.001】
グラム(Glam)
■基本データ
分類 魔核機
ランク SS
フレーム タイプ・ドラグーン
全高 約 5.0m
カラー 深紅×黒金
役割・能力 高機動近接戦闘・飛行型
操縦者 レオン
★機体概要
竜を模した外装を持つ高機動型魔核機。
ドラグーンフレーム特有の爆発的な加速性能を誇り、
近距離戦においては圧倒的な制圧力を発揮する。
また、飛べない機体が多い機兵戦や魔獣戦において、
無敵の強さを誇る。
転移プレイヤーの一人、レオンの愛機。
読んでいただきありがとうございます。
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