第五話 本物の剣
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
翌朝。
レオはいつもより早く起きていた。
まだ日も昇りきっていない。
森の空気は冷たい。
それでも木剣を振る音だけが響いていた。
何度も。
何度も。
昨日の光景が頭から離れない。
あの男。
たった一本の枝で自分を倒した男。
何が違ったのか。
何をされたのか。
未だによく分からない。
それが悔しかった。
「朝から気合い入ってるな」
レンが畑へ向かう途中で声を掛ける。
レオは木剣を止めない。
「負けたからな」
「そうか」
レンはそれ以上何も言わなかった。
しばらく見ていたが、やがて畑へ向かう。
言われなくても考えている。
そういう顔だった。
それで十分だった。
◇
朝食後。
昨日の旅人が再び現れた。
理由は
森でまた道に迷った。
という建前である。
本当は違う。
旅人もまだ整理できていなかった。
南辺境都市。
妖精王事件。
森の結界。
そして妙な連中。
気になることや怪しいことが多すぎた。
「また来たのか」
レンが言う。
「暇でな」
男が答える。
「そうか」
レンも深く追及しない。
きっと似た者同士なんだろう
◇
レオはすぐに飛び出してきた。
「もう一回頼む!」
男は少し笑う。
「元気だな」
「昨日の続きだ!」
即答だった。
男は少しだけ考えた。
そして頷く。
「いいだろう」
◇
結界の家の庭先。
リアもいる。
ノアはいつものように無言だ。
レンだけが少し離れた場所で畑仕事を続けている。
聞いていないようで聞き耳を立てていた。
◇
レオが飛び込む。
昨日より速い。
昨日より鋭い。
だが届かない。
男は半歩だけ動く。
それだけで全て外れる。
レオは止まらない。
振る。
踏み込む。
打つ。
蹴る。
考える。
それでも当たらない。
◇
十分後。
地面へ倒れ込んだ。
「なんでだ……」
息が上がる。
男は少し考えた。
「お前は歳の割には十分に強い」
「体力も根性もある」
レオが顔を上げる。
「だが剣しか見ていない」
「?」
「剣を振る時は必ず相手の動きを相手を見る癖を付けろ。」
◇
短い言葉だった。
だが重い。
「相手が何を考えているか」
「どこを見るか」
「何を狙っているか」
「そうやって剣を振る。素振りの時もな。」
レオは黙った。
初めて聞く剣の技の話だった。
◇
少し離れた場所。
リアも真剣に聞いていた。
レンとは違う。
でもレンのように私達を導こうとしている。
そんな気がした。
その時だった。
工房の方からトトの悲鳴が聞こえた。
「レンさーーん!!」
全員振り向く。
レンがため息を吐いた。
「どうした」
工房へ向かう。
そこではトトが真っ青になっていた。
嫌な予感がしてきた。
「ルウが!」
トトが指差す。
そこにはルウがいた。
なぜか瓶を抱えている。
嫌な予感はますますおおきくなる。
「何作った」
レンが聞く。
「疲労回復薬です」
笑顔でルウが答える。
「ん??」
「レオ兄ちゃん用です」
ルウは胸を張る。
「朝から頑張ってたので」
「僕にも何かできないかって思って。」
レオが少し感動する。
優しい弟だった。
だが、問題はそこではない。
8歳の子供が自力で作った薬
危なくないわけがない。
「試しに誰か飲んだのか?」
レンが聞く。
「トト兄ちゃんが」
全員がトトを見る。
トトは青ざめていた。
「美味かったですよ・・」
「そうか・・大丈夫か?」
「美味かったんですけど」
「うん?」
◇
「1日寝てないのに眠くないです」
沈黙。
ルウが誇らしげに言う。
「成功しました」
レンは頭を抱えた。
(うわ~こいつ、兄弟で実験しやがった・・)
「何入れた」
ルウが説明する。
薬草。
蜂蜜。
魔草。
果汁。
その他色々。
「その他色々って・・・」
途中から誰も分からなくなった。
唯一。
レンだけが固まる。
ルウいわく「回復薬」を見て
レンは少し心辺りがあった。
「まさか……」
一口飲む。
沈黙。
「どうですか?」
ルウが期待の目で見る。
レンはもう一口飲んだ。
さらにもう一口。
懐かしかった。
「似てる以上だ。……しかし・・」
「何にですか?」
「俺の故郷に伝わっている、元気になる飲み物だ。」
それ以上は言わなかった。
言っても誰も分からない。
ただ。
遠い昔。
ゲームのイベント前。
徹夜レイド前。
社会人時代。
何度も飲んだ記憶がある。
昔、どうしても飲みたくてレシピを考えていたが、
書き置いたものを
ルウがどこかで見つけて作ってみたらしい。
翼を授かったような気がする飲み物。
レンは少しだけ笑った。
「名前は?」
ルウが答える。
「翼の薬」
「いいね!」
トトが喜ぶ。
レンは黙った。
(ダサいな)
だが言わない。
嬉しそうだからだ。
「これ、氷室で冷やした方が美味いぞ。」
「あと、飲みすぎ禁止な。」
◇
少し離れた場所。
旅人の男――レオンはその様子を見ていた。
不思議な連中だ。
妙に居心地がいい。
そして。
この森にいると。
なぜか昔のことを思い出す。
ゲームばかりしていた頃。
仲間と馬鹿をやっていた頃。
そんなことを。
少しだけ思い出していた。
まだ誰も知らない。
◇
この薬が数か月後。
四人の転移者を絶叫させることになるなど。
今はまだ誰も知らなかった。
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ちなみに、炭酸はどう再現したかまでは考えていません(笑)




