第四話 南の森の影
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
翌朝。
リアとレオは南の森へ向かっていた。
討伐依頼を受けるためではない。
レンに言われた通り、まずは調査だ。
相手を知らずに戦うな。
その言葉は二人とも理解していた。
「珍しいな」
レオが言う。
「何がですか?」
「レンさんがあそこまで念押しするの」
リアも少し考える。
確かにそうだった。
普段のレンは自由だ。
危険だからやめろとは言う。
だが最終的には本人に任せることが多い。
今回は少し違った。
「きっと私たちも1人前とみとめられだしたんじゃない?」
「それだな」
レオも頷く。
真実は言っても多分聞かないから自分で判断させる。
が正解である。
森へ入ってから一時間ほど。
異変はすぐ見つかった。
木々が折れている。
地面が抉れている。
しかも一か所ではない。
「でかいな」
レオがしゃがみ込む。
爪痕だった。
普通の魔獣ではない。
「機兵サイズ?」
リアが呟く。
「かもな」
レオの顔も真剣になる。
被害範囲が広すぎる。
さらに進む。
やがて倒れた木々の向こうに巨大な足跡が見えた。
そこで二人は足を止める。
「戻るか」
レオが言った。
リアも反対しない。
十分だ。
これは新人冒険者がどうこう出来る話ではない。
その時だった。
森の奥から咆哮が響いた。
空気が震える。
鳥達が一斉に飛び立った。
二人は反射的に武器へ手を掛ける。
だが。
現れなかった。
代わりに森が静まり返る。
「見られてる」
レオが呟く。
リアも同じことを感じていた。
何かがいる。
だが見えない。
嫌な気配だけが残る。
「帰ろう」
今度はリアが言った。
二人は森を後にした。
無理をする理由はない。
レンならそう言う。
(この、魔獣と呼ばれる南の森の何かはいずれ大きな波紋を呼ぶ先触れである。)
◇
その日の夕方。
森の家。
「大型だな」
レンは報告を聞いていた。
トトも興味津々で聞いている。
「機兵より大きいかもしれません」
リアが言う。
「爪痕もありました」
「足跡もです」
レオが補足する。
レンは腕を組む。
少し考えた。
そして。
「受けるなよ?機兵なしで討伐なんてできるもんじゃないしな。」
即答した。
「ですよね。私も死にたくないですし。」
リアも予想していた。
むしろ受けろと言われた方が驚く。
「騎士団案件だ」
レンは言う。
「少なくとも新人冒険者の仕事じゃない」
レンは少し考える
(おそらく、魔獣ではなさそうだな。あいつらが転送してきたのか?)
トトも頷く。
さすがに危険なのは分かる。
「諦めますか・・」
リアは残念そうだった。
孤児院の足しになると思ったのだろう。
だが。
『シルフィネ使うか?』
とか言ってもらえると少しだけ
リアは期待もあったようだ。
しかしレンの言葉は
「別の依頼探せ」
「はい」
素直だった。
その時。
ノアの声が響く。
『来客を確認』
全員が顔を上げる。
『来訪者一名』
「カイルか?」
レンが聞く。
『不明』
珍しい返答だった。
ノアが不明と言うことは少ない。
◇
しばらくして。
森の入口へ向かう。
そこに立っていたのは見知らぬ男だった。
黒髪。
旅人のような服装。
剣を背負っている。
年齢は分からない。
ただ。
普通ではない。
レオは気が付く。
ギルドで声かけてきたやつだ・・
「突然すまない」
男が言った。
「少し道を尋ねたい」
レンは相手を見る。
どこかで見た気がした。
気のせいかもしれない。
「迷ったのか?」
「そんなところだ」
男は苦笑した。
あからさまに嘘だった。旅人がそもそも
こんな魔獣が出る森に単身で入ってくるわけがない。
だが悪意は感じない。
◇
しばらく雑談が続く。
男は街の様子を聞く。
寒波の被害を聞く。
孤児院の話も聞く。
まるで調査しているようだった。
そして。
男の視線がレオへ向く。
「剣をやるのか?」
「うん」
レオが胸を張る。
「毎日やってる」
「そうか」
男は少し笑った。
「なら見せてみろ」
◇
レオの目が輝く。
挑発ではない。
試されている。
それが分かった。
「いいのか?」
「構わない。本気で来てみろ。」
男は頷く。
◇
木剣を構える。
レオは本気だった。
毎日の鍛錬。
リアとの訓練。
自信もある。
だが。
一歩踏み込んだ瞬間。
気付けば地面に転がっていた。
◇
「え?」
本人が一番驚いていた。
何が起きたのか分からない。
攻撃した。
そのはずだった。
だが。
次の瞬間には負けていた。
男は木の枝を持っている。
それだけだった。
静寂。
レオは立ち上がる。
悔しい。
だが怒りは無かった。
ただ驚いている。
「今の……」
男が答える。
「歳のわりには鍛えているが、まだまだだな」
その言葉にレオは唇を噛んだ。
悔しい。
だが。
その男の剣技は美しかった。
圧倒的だった。
初めて見る本物だった。
◇
少し離れた場所。
レンは男を見ていた。
そして。
ようやく思い出す。
ゲーム時代。
見たことがある。
いや。
何度も見た。
(まさかな……)
その、剣技を披露していたプレイヤーは長い赤髪が特徴。
かつて見た赤い機体を駆っていた。
でも、この人物は黒い髪。
◇
あり得る。グラムもコッチに来て、見たばかりだ。
この世界には他のプレイヤーもいる。
ならば。
男もまた。
レンを見ていた。
結局。
二人とも結論には至れない状態だった。
◇
王国騎士団長レオンと。
結界士レン。
かつて同じゲームを遊んでいた二人が。
再会寸前まで来ていることに。
そして。
レオの人生を変える出会いが。
静かに始まろうとしていた。
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