第二話 二人の聖女
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
妖精王の奇跡から三週間。
南辺境都市の外れでは、孤児院の建設が順調に進んでいた。
寒波の際に避難所として使われた土地は、多くの人の手によって新しい居場所へと姿を変えつつある。
神殿から派遣された支援隊も到着し、街の雰囲気は以前より明るくなっていた。
アリシアは建設途中の建物を見上げる。
まだ骨組みだけの部分も多い。
それでも、ここに集まる人々の表情は前向きだった。
「復興が思ったより早いですね」
アリシアが呟くと、案内役の神官が苦笑した。
「カイル君達のおかげですよ」
「自分達より幼いであろう子供たちがあれだけ動いていれば」
「町の大人達も心打たれて前向きになるというものです。」
「そうですね。」
神官は建設現場へ視線を向けた。
カイルは大人達と何か話し合いをしている。
マルは大工達と一緒に作業をしていた。
シーナは商人達と帳簿を見ながら何やら交渉中らしい。
どの子も自然に役割を見つけていた。
アリシアは少し嬉しくなる。
神殿の一行とこの街に到着した時
必死に人に語り掛け
叫び
多くに手を差し伸べていた子供達。
矢面に立って活動していたたった数名が
今では町全体に広がり
雰囲気自体が生に満ちているようだった。
それは聖女としてではなく、一人の人間として素直に嬉しいことだった。
◇
視察を終えた帰り道。
街道を歩いていると見覚えのある姿が目に入った。
荷馬車の荷台から木箱を降ろしている少女。
リアだった。
「リアさん」
「あれ? アリシアさん」
リアが笑顔で手を振る。
最近は顔を合わせる機会も増え、自然と話せる関係になっていた。
「お手伝いですか?」
「はい。孤児院で使う物資です」
リアは木箱を軽々と持ち上げる。
「レンさんに運んでこいって言われました」
「レンさん?」
「面倒だからまとめて持っていけって」
アリシアは思わず笑った。
本人に会ったことはない。
だが話だけはよく聞く。
カイル達の恩人。
寒波の際に多くの人を救った人物。
「なんだか不思議な方ですね」
孤児や奴隷を拾い育て献身的に世に尽くしている
そんな人がいうセリフとしてアリシアの中では違和感があった。
「そうですね」
リアは即座に頷いた。
「かなり変です」
「そこは否定しないんですね」
「しませんね」
二人で笑う。
そのまま並んで歩きながら孤児院の方へ向かう。
「レンさんって、どんな人なんですか?」
アリシアが改めて尋ねる。
リアは少し考えた。
そして真面目な顔で答える。
「面倒くさがりで変な人です」
「下手なのに畑が好きです」
「はい」
「あまり家から出たがりません」
「はい」
「変な物ばかり作ります」
「はい?」
そこまで言ってからリアは少しだけ笑った。
「でも」
その一言で空気が変わる。
「誰より優しいですよ」
アリシアは静かに耳を傾ける。
「私達が何も持ってなかった時も」
「どこにも行く場所がなかった時も」
「ずっと、助けて貰ってましたから」
当たり前のように語られる言葉。
だが、その重みはアリシアにも分かった。
人を助けるのは簡単ではない。
まして人生ごと支えるのは。
「そうですか」
アリシアは小さく微笑んだ。
会ったこともない人物なのに、少しだけ興味が湧いていた。
「一度お会いしてみたいですね」
リアは少し困った顔をする。
「どうでしょう」
「難しいですか?」
「レンさん、一見、人嫌いなぶっきらぼうで。」
アリシアは目を瞬いた。
「人見知りなんですか?」
「かなり」
「だだ、中身はかなり子供な部分があります。」
真顔だった。
寒波の際に奇跡を起こしたかもしれない人物。
孤児達の保護者。
そして人見知りな子供・・
ますます想像がつかない。
◇
その頃。
森の工房では金属を打つ音が響いていた。
トトが黙々と工具を動かしている。
目の前には分解された機兵の腕部。
レンから渡された教材だった。
「どうだ?」
レンが声を掛ける。
「難しいです」
トトは即答した。
「でも面白いです」
「そうか」
レンは頷く。
トトの視線は真剣だった。
以前のように機兵を眺めているだけではない。
どう動くのか。
なぜ動くのか。
理解しようとしている。
「うーん・・ここがこうなって」
トトが苦笑する。
「細かすぎます」
「そうか?」
レンにはよく分からなかった。
トトは工具を置き、少しだけ工房の奥へ目を向ける。
そこには布を掛けられたままの機体があった。
シルフィネ。
先日完成したばかりの試作機兵。
リアが一目見て気に入り、半ば強引に自分の物にしようとしている機体でもある。
「見なくていいのか?」
レンが聞く。
「見たいです」
トトは即答した。
「でも今は我慢します」
「なんでだ?」
「先にこっちです」
分解された機兵を指差す。
「どうせ後で見れますし」
レンは少しだけ驚いた。
以前のトトなら真っ先に飛び付いていたはずだ。
だが今は違う。
目の前の課題を優先している。
職人として少しずつ成長している証拠だった。
「そうか」
レンは短く答えた。
トトは再び作業へ戻る。
工房に工具の音が響く。
穏やかな時間だった。
◇
一方その頃。
リアとアリシアはまだ話しながら歩いていた。
偽りの聖女と。
本物の聖女。
まだ誰も知らない二人の少女。
だが、その縁は少しずつ深まっていく。
そして、その先には。
世界を揺るがす運命が待っていた。
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