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第一章エピローグ 妖精王の名の下に

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。

 寒波事件から二週間。


 南辺境都市は少しずつ落ち着きを取り戻し始めていた。


 もちろん被害は大きい。


 亡くなった者もいる。


 家を失った者もいる


 それでも。


 予想されていた最悪の未来は回避された。


 多くの人々がそう信じていた。


 ――妖精王が救ってくれたのだと。



 仮設避難所。


 かつて空き地だった場所には簡易住宅が並んでいた。


 マルが中心となって建設した木造施設。


 まだ粗削りだが、人が暮らすには十分だった。


「そっちの木材運びます」


「了解」


 マルが頷く。


 以前なら無口なだけの少年だった。


 だが今は違う。


 自然と周囲が従っている。


 本人にその自覚はない。


 ただ必要だから動いているだけだった。


 少し離れた場所ではシーナが帳簿を確認していた。


「食料在庫は十五日分」


「薪は余裕あり」


「毛布は不足気味ですね……」


 商人達との交渉も任されるようになっていた。


 まだ子供だ。


 だが大人達より信用され始めている。


 騙されない。


 誤魔化されない。


 そして利益も出す。


 それが大きかった。


 そして。


 避難民達の中心にはカイルがいた。


 炊き出し。


 相談。


 案内。


 子供達の世話。


 休む暇も無い。


 それでも不思議と疲れた顔はしていなかった。


「カイルさん!」


 小さな子供が駆け寄る。


「どうした?」


「ありがとう!」


 満面の笑み。


 カイルは少し照れ臭そうに笑った。


 自分もかつては助けられる側だった。


 だからだろう。


 この言葉が何より嬉しかった。



 そんな避難所へ一台の馬車が到着する。


 白い神殿の紋章。


 人々がざわめいた。


「聖女様だ」


「オフィーリア様だぞ」


 馬車から降りた女性は静かに周囲を見渡した。


 長い金髪。


 白い神官服。


 柔らかな微笑み。


 聖女「オフィーリア」アリシアだった。


 彼女は目の前の光景に言葉を失う。


 子供達が働いている。


 避難民を支えている。


 神殿が到着するより先に。


 救済活動を始めている。


 そして何より。


 そこには希望があった。


「あなたがカイルさんですか?」


 アリシアが声を掛ける。


 カイルは慌てて頭を下げた。


「は、はい!」


「お会いできて良かったです」


 優しい笑顔だった。


 その後ろでシーナとマルも緊張している。


 だが。


 アリシアはそんな三人へ深く頭を下げた。


「ありがとうございました」


 三人とも固まる。


「え?」


 カイルが聞き返した。


「多くの人が救われました」


「それは皆さんのおかげです」


 聖女が頭を下げている。


 それだけで周囲の大人達も慌て始めた。


 だがアリシアは本気だった。


 彼女には分かる。


 救われた命の重さが。



 その日の夜。


 神殿の神官達が焚き火を囲んでいた。


 話題は当然、寒波事件である。


「やはり妖精王様だったのでしょうか」


 一人の神官が言う。


「光の翼だったそうです」


「伝承そのままですね」


 別の神官も頷く。


 アリシアは静かに耳を傾けていた。


 妖精王オベロン。


 世界樹教最大の信仰対象。


 世界樹を守護する王。


 災厄の日に羽を広げ、人々を守る存在。


 子供でも知っている神話だった。


 今回の奇跡は。


 あまりにも伝承に似ている。


 光の翼。


 街を覆う加護。


 災害からの救済。


 だから誰も疑わない。


 妖精王が現れたのだと。


 そう考えるのが自然だった。


 アリシアもまた否定できなかった。


 説明がつかないのだ。


 あの奇跡を。


「本当に……妖精王様だったのでしょうか」


 小さく呟く。


 その答えを知る者は誰もいない。



 その頃。


 王都。


 王城の会議室。


 三人の人物が集まっていた。


 一人は赤髪の騎士。


 王国騎士団長レオン。


 一人は長い黒髪の魔術師。


 王立魔法学院長ミスト。


 そして。


 筋肉隆々の壮年の辺境伯バルド。


 いずれも王国最高戦力。


 そして。


 元「エターナル」のプレイヤーだった。


「寒波事件か」


 レオンが資料を眺める。


「妖精王ねぇ」


 ミストが苦笑した。


「どう思う?」


 バルドが尋ねる。


 しばらく沈黙。


 やがてレオンが口を開いた。


「この結果は私たちの知る、シナリオでは無かった。」


「あー・・この後、南部が廃墟になって反国家のレジスタンスになるんだよねぇ。」


ミストも頷く。


「強力過ぎてチートだったわ。あのNPCなんだっけ?」


レオンが答えた。


「レジスタンス首領「ガイル」と魔核機「マルシーナ」だ。」


「はっはっ。俺は、何度も叩き潰されて、そいつのスタイルを参考に今のビルドに決めた。」


「本音は逢って、今度こそリベンジしたかったんだがな!今となっては、どこにいるんだか。」


バルドが口をはさむ。

 

「南部の滅んだ原因は領主が逃げたからと思って、わざわざ捕まえたのに、無意味だったねぇ。」


「南部が荒廃して、レジスタンスが生まれたら、我々の活動難易度も格段に上がるからな。」


「私たちの戦力もまだ固まってないし、南部都市滅ばなくて、良かったじゃん。」


「噂では、その妖精王。街全体を強力な結界で守ったらしいぞ。そんなフィールドボス級の魔獣がいたら俺たちがしらねぇわけがねぇ。」


 バルドが腕を組む。


 そんな技術や魔獣は少なくとも彼らは知らない。


 そして。


 ミストが何かを思い出したように笑った。


「結界・・・そういえば」


「いたな」


「ん?」


 レオンが見る。


「変な奴」


 ミストが言う。


「亀職の変人だったか?」


 バルドも思い出したらしい。


「ああ」


 レオンも苦笑した。


 防御職。


 結界職。


 普通なら不人気職。


 だが。


 たった一人だけ異常なプレイヤーがいた。


 黒い機体に結界を貼り。


 レイド魔獣に突撃していた変人。


 見かけるたびに人と違うプレイスタイルばかり追求する奴。


 レイドより拠点作りが好きだった変人。


「名前・・」


 ミストが首を傾げる。


 しばらく考える。


 「まぁいいか」


 話は終わる。


 それほどの存在だった。


 レオンだけは、この人物の名前をおぼえていた。


 あまりに自分とのプレイスタイルの差異がありすぎて目が離せない存在。


 強さを求める自分たちのスタイルとは違う、自己満足で楽しむスタイル。


 ランクにも名前が出ないほどに、弱いのになぜかプチ有名な奴。


 あいつもこの世界にいるのだろうか・・・

 

 「・・お前なのか?」



 そして誰も知らない。


 遥か昔から。


 世界を見下ろしている者達がいる事を。


 世界各地に点在する古代施設。


 眠る観測装置。


 育成場。


 研究所。


 そして。


 人類が神話と呼ぶ存在達。


 彼らはまだ動かない。


 まだ観察しているだけだ。


 だが。


 世界は少しずつ変わり始めていた。


 妖精王の奇跡。


 寒波事件。


 聖女。


 そして名も無き結界士。


 その全てが。


 やがて世界の運命を動かしていく。


 第二章へ続く。


第一章完結です。

今後は1話づつ毎日20時更新を予定しています。

第一章、ここまでお読みいただきありがとうございました!おっさんと〇〇の旅は第二章へ続きます。もし楽しんでいただけたら【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、次章へのエネルギーを分けてください!

面白かったら評価、ブックマークで応援していただけると嬉しいです。

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