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第十七話 赤き竜と偽りの聖女

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。

 冬まで残り二十三日。


 王国全土に不穏な空気が広がり始めていた。


 北方で発生した異常寒波。


 それは単なる寒さではない。


 街を止め、人を殺し、国そのものを揺るがす災害として認識され始めていた。


 しかし。


 南辺境都市の住民達にとって、それ以上の問題があった。


 領主の逃亡である。


 街を守るべき人間が真っ先に逃げた。


 その事実は人々から希望を奪っていた。



 南辺境都市郊外。


 街道を豪華な馬車が走っていた。


 本来なら領主が乗るはずの馬車。


 だが今は違う。


 縄で縛られた男が床に転がされている。


 元領主だった。


「離せ!」


「私は貴族だぞ!」


「王国に尽くしてきた!」


 叫ぶ声を騎士達は無視する。


 馬車の外から低い声が聞こえた。


「尽くした?」


 元領主が息を呑む。


 馬車の窓から見えるのは赤い機体。


 巨大な翼。


 真紅の装甲。


 まるで竜のような姿。


 神機グラム


 王国最強の象徴だった。


 その足元に立つ男を、知らぬ者はいない。


 王国騎士団長。


 レオン。


「市民を捨てて逃げた人間がか?」


 冷たい声だった。


 元領主は言葉を失う。


「寒波は災害だ!」


「どうしようもなかった!」


「私だけの責任では――」


「だから何だ」


 レオンは遮った。


「信念のある貴族なら逃げない」


 短い言葉だった。


 だが重かった。


 元領主は顔を伏せる。


 もはや何も言えない。


「王都へ送れ」


「はっ!」


 騎士達が敬礼する。


 レオンは空を見上げた。


 鉛色の雲。


 冬は確実に近付いている。


「……時間がないな」


 誰にも聞こえない声だった。



 一方。


 王都。


 巨大な神殿の一室。


 窓から差し込む光の中で、一人の少女が報告書を読んでいた。


 長い金髪。


 整った顔立ち。


 白い神官服。


 その姿だけ見れば誰もが聖女だと思うだろう。


 だが。


 本人だけは違うと知っている。


「南辺境都市……」


 今代の聖女「オフィーリア」を務める少女アリシアは小さく呟いた。


 報告書には異常寒波の被害予測が記されている。


 そして。


 黒い、伝説の魔核機らしきものの出現という不気味な事件噂。


 南部都市の住民が徐々に町を見捨てている事・・


「また増えてる……」


 最近増えている。


 異常気象。


 魔獣の活性化。


 収穫量の低下。


 災害。


 どれも聖女が不在、長期祈祷のない時に起こる現象に似ていた。


 アリシアは拳を握る。


 自分の胸に手を当てた。


「私のせい……」


 誰にも聞こえない声。


 彼女は知っている。


 自分が本物の聖女ではないことを。


 神殿は隠している。


 民衆は知らない。


 だが本人だけは分かっていた。


 本来ここにいるべき人間ではない。


 だからこそ。


 災害が起きるたびに思う。


 自分が原因なのではないかと。


 その時だった。


 部屋の扉が叩かれる。


「オフィーリア様」


「どうぞ」


 入ってきた神官が頭を下げる。


「南辺境都市への支援要請が届いています」


 アリシアは顔を上げた。


「被害は?」


「予想以上です」


 神官の顔も暗い。


「寒波到達前に避難所の建設が必要かと」


 アリシアは少し考えた。


 そして。


「私が行きます」


 神官が固まる。


「ですが危険です」


「だからです」


 アリシアは微笑んだ。


 優しい笑顔だった。


 だがその瞳には強い意志が宿っている。


「助けを求める人がいるなら」


「聖女はそこにいるべきです」


 神官は返す言葉を失った。



 同じ頃。


 森の家。


 食堂では子供達が大騒ぎしていた。


「成功率上げるぞ!」


 レオが机を叩く。


「どうやって?」


 シーナが冷静に聞く。


「気合」


「却下」


 即答だった。


 レオが沈む。


「木は集められる」


 マルが言う。


「でも家を建てる人が足りない」


「お金も足りない」


 シーナが続く。


「食料も足りない」


 ルウも言う。


 議論は続く。


 だが答えは出ない。


 皆が頭を抱えている中。


 レンだけは静かにお茶を飲んでいた。


「レンさん」


 リアが声を掛ける。


「ん?」


「何か言う事ありませんか」


 レンは少し考えた。


「頑張れ」


「雑!」


 リアが思わず突っ込む。


 食堂に笑いが起きた。


 少しだけ重苦しい空気が和らぐ。


 レンは窓の外を見る。


 遠くの森。


 さらにその奥。


 誰にも知られていない場所。


 そこに眠るネスト。


 頭の中で計算する。


 使える資材。


 残された時間。


 助ける人数。


 まだ足りない。


 まだ早い。


 今は子供達に考えさせるべきだ。


 そう思っていた。


 だが。


 ノアが小さな声で告げる。


『警告』


 レンの眉が僅かに動く。


『寒波進行速度上昇』


『到達予測』


『二十日後』


 レンは無言でお茶を飲み干した。


 窓の外では冷たい風が吹いている。


 冬は。


 予想より早くやって来ようとしていた。


読んでいただきありがとうございます。


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