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第十五話 帰りたくなかった街

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。

 孤児達が森の家へ来てから半年近くが過ぎていた。


 森の景色も変わった。


 荒れていた畑には作物が並び。


 空き地だった場所には倉庫が建ち。


 子供達もそれぞれ役割を持つようになっていた。


 レオは毎朝剣を振る。


 マルは力仕事を率先して引き受ける。


 シーナは帳簿を付けるのが日課になった。


 トトは工房に入り浸り、工具を磨いている。


 ルウは薬草畑を管理するようになった。


 カイルは畑と家事をこなし、森の家の生活を支えている。


 少しずつ。


 少しずつ。


 皆が前へ進んでいた。



 そんなある日の夕食後。


 食堂の机の上にノアが座る。


 ぬいぐるみの先生だった。


『本日の授業を始めます』


 子供達の背筋が伸びる。


 最初は舐めていた。


 今は違う。


 ノアは怖い。


 本当に怖い。


『商売とは何ですか』


「利益を出すこと」


 シーナが即答した。


『正解です』


 満足そうに頷く。


『では実践授業を行います』


「実践?」


『安く買い』


『高く売る』


『基本です』


 ノアは続けた。


『数日後』


『南辺境都市へ向かいます』


 空気が固まる。


 レオが顔をしかめた。


 マルも黙る。


 シーナも笑顔を消す。


 カイルも目を伏せた。


 そこは。


 かつて彼らが生きていた街。


 スラムのある街だった。


「行きたくねぇな……」


 レオが呟く。


「私もです」


 珍しくシーナも同意した。


 リアも苦笑する。


「正直、良い思い出ないわね」


 すると。


 レンがパンを齧りながら言った。


「仕入れには向いてる」


「理由それですか」


 リアが呆れる。


「商売なんてそんなもんだろ」


 レンは平然としていた。



 数日後。


 一行は南辺境都市へ到着した。


 高い城壁。


 煤けた石壁。


 見慣れた景色。


 だが。


 懐かしさを感じる者はいなかった。


 思い出すのは。


 飢え。


 寒さ。


 暴力。


 絶望。


 そんな記憶ばかりだった。


「まずは仕事だ」


 レンの一言で現実へ戻る。


 一行は市場へ向かった。



「安い……」


 シーナが驚いた。


 この前いった街より明らかに安い。


 野菜も。


 干し肉も。


 布も。


 工具も。


 何もかも安い。


「向こうで銀貨一枚の物が、ここなら銅貨八十枚だ」


「利益になりますね」


「なる」


 シーナの目が輝く。


 完全に商人の顔だった。


 リアが苦笑する。


「ノアの教育成果かしら」


「怖い先生だからな」


 レンも苦笑した。


 一方。


 マルは荷運びを見ていた。


 商人達が汗だくで荷物を運んでいる。


「どうした?」


 レンが聞く。


「運び方が下手だなって」


 レンが吹き出した。


「お前らしいな」


 マルは本気だった。



 仕入れを終えた頃。


 市場の空気が妙に騒がしい事に気付く。


 商人達が集まっていた。


「本当なのか?」


「領主様が逃げたらしい」


「終わりだ……」


 誰もが顔色を悪くしている。


「何の話だ?」


 レオが商人へ聞いた。


 商人は疲れた顔で答える。


「寒波だよ」


「寒波?」


「北方で異常寒波が発生したらしい」


「占術師の予言だ」


「今年は王国全土が冷え込む」


 さらに声を潜める。


「領主様は財産をまとめて逃げた」


 全員が固まった。


「逃げた?」


 カイルが聞き返す。


「ああ」


「貴族も金持ちも逃げ始めてる」


「残るのは俺達みたいなのだけだ」


 重い沈黙が落ちた。



 その時だった。


 街中がざわつく。


「おい!」


「あれは!」


 誰かが叫んだ。


 皆が空を見上げる。


 赤い光。


 巨大な影。


 翼を持つ巨大な魔核機とうわさされる機体。


 真紅の装甲。


 燃えるような光。


 神話の竜を思わせる威容。


 街中が騒然となる。


「グラムだ!」


「騎士団長だ!」


「レオン様だ!」


 歓声が上がる。


 巨大な機体が街外れへ向かって飛んでいく。


 その姿は一瞬だった。


 だが。


 誰もが目を奪われた。


「王国最強だ」


 近くの商人が呟く。


「騎士団長レオン」


「グラムに乗る英雄様だ」


 レオが見上げる。


 空の彼方へ消えていく赤い光。


 胸が少し高鳴った。



 市場を後にする。


 帰る前に。


 久しぶりにスラムの近くを通った。


 そこには。


 昔の自分達がいた。


 痩せた子供。


 病気の老人。


 疲れ切った母親。


 何も変わっていない。


 カイルが立ち止まる。


 小さな兄妹がいた。


 兄が妹を庇っている。


 裸足だった。


 痩せていた。


 昔の自分達そのものだった。


 胸が痛む。


 レオも。


 マルも。


 シーナも。


 ルウも。


 言葉が出ない。


 寒波が来る。


 このままなら。


 あの子達は冬を越せない。


 嫌でも分かった。


 昔の自分達だからだ。



 帰り道。


 荷馬車は森へ向かっていた。


 皆が静かだった。


 その時。


 ゴオオオオオオッ!


 突風が吹く。


 荷車が揺れる。


「うわっ!?」


 レオが振り返った。


 空。


 真紅の巨体。


 巨大な翼。


 燃えるような装甲。


 低空飛行。


 あまりにも近い。


 圧倒的な存在感。


 風圧だけで木々が揺れる。


「すげぇ……」


 レオが呟く。


 それしか言葉が出なかった。


 神話の竜。


 本当にそう見えた。


 カイルも目を奪われる。


 ルウも。


 シーナも。


 マルも。


 誰もが空を見上げていた。


「あれが……」


「グラムだな」


 レンがぽつりと言った。


 それだけだった。


 だが。


 どこか懐かしそうだった。


 真紅の巨体は南へ向かう。


 やがて空の彼方へ消えていった。



 その頃。


 南へ逃亡していた領主の馬車は街道を走っていた。


「急げ!」


「もっと速度を上げろ!」


 護衛達も焦っている。


 その時だった。


 森が揺れた。


 木々が倒れる。


 魔獣だった。


 いや。


 群れだった。


 寒波の余波から逃げてきた魔獣達。


 数が多い。


 止められない。


「迎撃!」


「無理です!」


「多すぎる!」


 絶望が広がる。


 その瞬間。


 空が赤く染まった。


 轟音。


 赤い閃光。


 次の瞬間。


 魔獣の群れが消えていた。


 一撃だった。


「グラム……」


 護衛が震える声で呟く。


 王国騎士団最強。


 紅蓮の機体、グラム。


 真紅の巨体は馬車の前へ降り立った。


 逃亡劇は終わった。



 森へ戻った頃には夕暮れになっていた。


 夜。


 皆が寝静まった後。


 カイルは一人で畑の前に立っていた。


 そこへレンが現れる。


「寝ないのか」


「少しだけ」


 しばらく沈黙。


 やがて。


 カイルが言った。


「助けたいです」


 レンは何も言わない。


「全部は無理です」


「分かってます」


「でも」


「少しなら」


「俺達にも出来るかもしれない」


 レンは空を見上げた。


 冷たい風が吹いている。


「好きにしろ」


 いつもの言葉だった。


 カイルは少し笑う。


「ありがとうございます」


「まだ何もしてない」


「これからです」


 カイルの目は真っ直ぐだった。



 森の奥。


 誰にも聞こえない声で。


 ノアが呟く。


『異常寒波接近』


『到達予測』


『二十五日後』


『被害予測』


『多数死亡』


 静かに。


 冬が近付いていた。


【エターナルWiki No.008】

機兵ビルドシステム

『エターナル』最大の特徴の一つ。

プレイヤーは自分だけの機兵を構築することができる。

同じ機体は存在せず、

搭乗者ごとの個性が機体性能へ反映される。

■機兵の強さ

機兵および魔核機の性能は、

以下の三要素によって決定される。

①フレーム性能

機体の素体となる骨格。

レアリティが高いほど性能が高い。

②魔核

魔核機専用動力源。

極めて高性能。

入手は困難。

③人工魔結晶

機兵用動力源。

魔核の代替品として開発された。

性能は魔核に劣る。

■フレームランク

魔核機

ランク分類

SSS最高級魔核機

SS上位魔核機

S標準魔核機

機兵

ランク分類

RRR最高級機兵

RR上位機兵

R標準機兵

■搭載可能数

フレームごとに搭載可能な魔核数が存在する。

魔核機

ランク搭載数

SSS10

SS8

S4

機兵も同数のスロットを持つが、

搭載可能なのは人工魔結晶のみとなる。

■性能差

人工魔結晶1個の性能は、

魔核1個のおよそ10分の1。

SSS魔核機

魔核10個搭載

理論値100

RRR機兵

人工魔結晶10個搭載

理論値10

そのため、

機兵が魔核機へ正面から勝利することは極めて困難とされる。

ただし。

フレーム性能の差によって、

一部例外も存在する。

RRR機兵(人工魔結晶10基搭載)

Sランク魔核機(魔核1基搭載)

理論上は同等性能となる。

■入手方法

魔核および人工魔結晶は非常に希少。

主な入手手段は以下。

・大型イベント報酬

・高難易度レイド

・期間限定配布

・課金販売

サービス開始以降、

魔核機の性能を完全開放したプレイヤーは確認されていない。


【プレイヤーメモ】

初心者はまずR機兵から開始する。

魔核機は上級者向けコンテンツであり、

所有しているだけで有名人になれるほど希少である。

そのため、

サービス開始当初のプレイヤー達にとって、

魔核機は憧れの存在だった。


読んでいただきありがとうございます。

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