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第十三話 新しい先生

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。

 翌朝。


 朝食を終えた子供達は食堂に集められていた。


 レオは腕を組み。


 マルは椅子に座り。


 シーナは本を抱え。


 トトは工房を気にし。


 ルウは薬草を眺めている。


 そんな中。


 レンが工房から出てきた。


 何かを抱えている。


「何ですかそれ」


 シーナが聞く。


「先生」


 レンが答えた。


 全員首を傾げる。


「先生?」


「先生だ」


 説明になっていない。


 レンは机の上にそれを置いた。



 白いぬいぐるみだった。


 丸い。


 耳がある。


 尻尾もある。


 可愛い。


 トトの目が輝く。


「可愛い!」


 その瞬間。


 ぬいぐるみが立ち上がった。


『初めまして』


 静寂。


 レオが固まる。


 マルが固まる。


 シーナが固まる。


 トトだけ喜んだ。


「動いた!」


『私はノアです』


『本日より皆さんの教育を担当します』


ノア。


「エターナル」では、


イベントで入手可能なアイテムでのみ、生成可能。


この世界での入手ルートは不明。


ゲーム内では、


デザイン可能なサポートマスコットとしてかなり人気のあるアイテム。



孤児たちは、喋った人形に耳を疑った。


「教育?」


 レオが聞く。


『はい』


『読み書き』


『算術』


『地理』


『歴史』


『薬術』


『農業』


『商業』


『礼儀作法』


『生存技術』


『その他』


 その他が怖い。


 全員そう思った。


 しかし。


 レオは納得していなかった。


「いや」


 腕を組む。


「ぬいぐるみだろ」


 マルも頷く。


「ぬいぐるみだね」


 トトも頷く。


「可愛い」


 シーナも困った顔をする。


 ルウだけ興味津々だった。


『失礼です』


 即座に返ってきた。


 トトが飛び上がる。


『私は教育支援人格です』


『ぬいぐるみではありません』


「でも見た目はぬいぐるみだろ」


 レオが言う。


『外見と能力は関係ありません』


 その返答が妙に腹立たしい。


 リアが肩を震わせた。


 笑っている。


 カイルも笑っている。


 レオが振り返る。


「何笑ってるんだ」


 リアは口元を押さえた。


「頑張って」


「何が?」


「全部」


 嫌な予感しかしない。



 カイルも苦笑する。


「僕も最初そうでした」


「そう?」


 レオが聞く。


 カイルは遠い目になった。


「最初の畑仕事の時です」


 ノアの声を真似する。


『雑草率17%』


『灌水不足』


『肥料配分失敗』


『収穫予測は平均以下です』


 食堂が静かになる。


「え?」


『事実です』


 ノアが即答した。


 カイルは苦笑した。


「三日くらい落ち込みました」


 レオ達は引いた。



 今度はリア。


「私はもっと酷かったわ」


 全員振り返る。


「何されたんです?」


 リアは遠い目をした。


「剣の訓練」


 嫌な予感がする。


『本日の剣速』


『前日比マイナス3.2%』


『姿勢修正を推奨』


『疲労は言い訳になりません』


「疲れてたのよ!」


『言い訳です』


「むかつく!」


『事実です』



 レオ達が引いた。


 リアが机を叩く。


「一週間喧嘩した!」


『正確には六日十八時間です』


「覚えてるの!?」


『当然です』


 怖い。


 かなり怖い。


 マルが少し後退った。


 すると。


 レンがぼそりと呟いた。


「俺もやられた」


 全員が振り向く。


「レンさんも?」


「ああ」


 珍しく嫌そうな顔をしている。



『レン』


『起床予定時刻を超過しています』


『怠慢です』


「うるさい」


『怠慢です』


「黙れ」


『怠慢です』


「黙れ」


『怠慢です』



 リアが吹き出した。


 カイルも吹き出した。


 レオ達も笑いそうになる。


 レンがため息を吐く。


「三日隠れた」


「負けてるじゃないですか」


 リアが言う。


「負けた」


 認めた。


 レオ達は顔を見合わせた。


 リアも。


 カイルも。


 レンですら。


 全員負けている。


 そんな相手らしい。


 すると。


 ノアが全員を見渡した。


『それでは確認します』


 嫌な予感がした。


『レオ』


『算術試験』


「待て」


『却下』


「まだ何も言ってない」


『却下です』


「何でだ」


『学力不足だからです』


 リアがまた吹き出した。


『マル』


『荷物計算』


『シーナ』


『帳簿管理』


『トト』


『工具名称百問』


「百!?」


『ルウ』


『薬草基礎』


「お願いします」


『良い返事です』


 ルウだけ嬉しそうだった。


 ノアは満足そうに頷いた。


『全員基礎能力不足』


『よって教育課程を開始します』


 レオが立ち上がる。


「逃げよう」


 マルが頷く。


「逃げたい」


 トトも頷く。


「工房行きたい」


 シーナは首を振る。


「無理」


『正解です』


 ノアが即答した。


『逃走は認めません』


「聞いてた!?」


『当然です』


 そして。


 小さなぬいぐるみは。


 満面の笑みで宣言した。


『安心してください』


『皆さんを立派な人材に育成します』


 一拍置いて。


『泣くほど勉強させますので』


 その瞬間。


 森の家に悲鳴が響いた。


「嫌だあああああっ!」


 こうして。


 未来の騎士団副団長。


 未来の名工。


 未来の財界の王。


 未来の機械工。


 未来の大賢者。


 その全員が。


 鬼教官ノアの授業を受けることになった。


 なお。


 誰一人として。


 逃げ切れた者はいない。


【エターナルWiki No.007】

MMORPG『エターナル』

サービス開始当初の宣伝文句。

■ゲーム概要

世界樹の大国アストラを舞台としたMMORPG。

プレイヤーは英雄候補として世界各地で発生する事件や災害に立ち向かう。


キャッチコピー


君の行く末はまだ誰も知らない――


■世界観

舞台は世界樹を中心とした大国アストラ。

世界は既に衰退の兆候を見せており、

魔獣災害。

異常気象。

国家間紛争。

様々な危機に晒されている。

プレイヤーはその中で生き残り、

人類の未来を切り開いていく。


■プレイヤー

プレイヤーは英雄候補として扱われる。

戦功や功績を積み重ねることで、

騎士位や爵位を獲得可能。

最終的には国家運営に関わることもできる。


■機兵システム

エターナル最大の特徴。

プレイヤーは巨大兵器「機兵」を所有できる。

機兵

量産型人型兵器。

各種パーツ交換や改造が可能。

魔核機

特殊イベントや高難易度クエストで入手可能な上位機体。

極めて希少。


プレイヤー達の憧れの存在。


■イベント

定期的に大型イベントが開催される。

イベント報酬には、

魔核機

希少素材

特殊装備

限定称号

などが存在する。


■開発者コメント


「世紀末ファンタジーと巨大ロボットの融合」


をコンセプトとして開発された。

当時としては珍しい、

国家運営と機兵戦闘を組み合わせたMMORPGである。


【プレイヤーメモ】

サービス開始当初、

多くのプレイヤーは機兵や魔核機に憧れてゲームを始めた。


しかし実際には、

資源管理。

領地経営。

災害対応。

外交。

生産。

など戦闘以外の要素も多く、

後に「政治ゲーム」「運営シミュレーター」などと呼ばれるようになる。


読んでいただきありがとうございます。

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