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第十二話  居候候補五名

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。

 ルウを抱えたまま。


 レンは家へ向かって歩いていた。


 その後ろを。


 四人の子供達が付いてくる。


 警戒しながら。


 逃げる準備をしながら。


 それでも付いてくる。


 リアは少し前の自分を思い出していた。


 信用した訳じゃない。


 でも。


 他に行く場所も無い。


 そんな状態。


 やがて家へ到着する。


 子供達は固まった。


「でか……」


「家だ……」


「本当に家だ……」


 結界の外から見ていた時より大きく見える。


 ルウを客間へ寝かせる。


 カイルが慌てて水を持ってくる。


 リアは額に手を当てた。


 熱い。


「かなり熱があります」


「だな」


 レンは頷く。


 そのまま棚から薬箱を持ってきた。


 子供達が驚く。


「薬?」


「あるんですか?」


「少しだけな」


 レンは薬草を調合し始める。


 リアは気付いた。


 こういう時だけ妙に手際が良い。


「レンさん」


「ん?」


「慣れてます?」


 レンは一瞬だけ手を止めた。


「慣れたくなかったけどな」


 それだけ言って作業を続けた。


 リアは聞かなかった。


 たぶん。


 街にいた頃の話だ。


 薬を飲ませる。


 しばらくすると呼吸が落ち着いた。


 完全ではない。


 でも。


 最悪の状態は脱した。


 皆が安堵する。


 その時だった。


 レンが椅子へ座った。


「さて」


 嫌な予感がした。


 リアも。


 カイルも。


 子供達も。


 全員同じ顔になる。


「話し合いだ」


 始まった。


 レンは子供達を見る。


「名前」


 しばらく沈黙。


 一番年上らしい少年が口を開いた。


「レオ」


 他の子も続く。


「マル」


「シーナ」


「トト」


 最後に寝ている少年を見る。


「ルウ」


 レンは頷いた。


「で」


 嫌な予感が強くなる。


「お前ら今後どうする」


 全員黙った。


 分からない。


 本当に分からない。


 だから森へ来たのだ。


 レオが俯く。


「分からない」


「そうか」


 レンは頷く。


 怒らない。


 呆れない。


 ただ頷く。


「俺もそうだった」


 リアが少し驚く。


 珍しく自分の話をした。


「街にいたら死ぬと思った」


「……」


「だから逃げた」


 レオが顔を上げる。


 その目は少しだけ驚いていた。


「森に?」


「ああ」


「一人で?」


「一人で」


 レオは少し考えた。


「無茶だ」


「そうだな」


 レンは笑った。


「だから何回か死にかけた」


 全然笑い事ではない。


 リアは呆れた。


 カイルも同じ顔をしている。


「で」


 レンは指を立てる。


「一つだけ言う」


 全員が真剣になる。


「ここは孤児院じゃない」


 静かになる。


「俺は貴族でもない」


「……」


「金持ちでもない」


「……」


「聖人でもない」


 最後だけ少し怪しかった。


 リアは思う。


 結構お人好しだ。


 だがレンは続ける。


「だから養う気は無い」


 レオ達の顔が曇る。


 当然だ。


 だが。


 レンは次の言葉を続けた。


「その代わり」


 全員が顔を上げる。


「働くなら面倒は見る」


 沈黙。


 今度は。


 子供達が理解できなかった。


「働く?」


 レオが聞く。


「ああ」


 レンは指を折る。


「畑」


 カイルを見る。


「料理」


 カイルが苦笑する。


「掃除」


 リアを見る。


「森の見回り」


 自分を指差す。


「仕事は山ほどある」


 レオ達が顔を見合わせる。


「出来るか?」


 レンが聞く。


 レオは答えた。


「出来る」


 即答だった。


「皆も?」


 四人とも頷く。


 その瞬間。


 レンは大きく息を吐いた。


「よし」


「え?」


「今日から居候だ」


 全員固まった。


 リアも固まった。


 カイルも固まった。


「早くないですか!?」


 リアが叫ぶ。


「早いな」


 レンも認めた。


「じゃあ何で!」


「今更追い出せんだろ」


 それはそうだった。


 ルウは寝ている。


 行く場所も無い。


 追い出したら死ぬ。


 皆分かっている。


 だから誰も反論できない。


 その時。


 カイルが立ち上がった。


「じゃあ」


 全員を見る。


「僕が教えます」


 レオ達が驚く。


 カイルは少し照れながら言った。


「僕も最初は何も出来ませんでした」


 畑を見る。


 料理を見る。


 家を見る。


「だから今度は僕の番です」


 リアは少し笑った。


 レンも少し笑った。


◇ 


 こうして。


 森の家の住人は。


 三人から。


 八人へ増えることになった。


 誰も気付いていない。


 レンの財布が。


 盛大に死んだことを。



 森の家の新しい住人が増えた。


 朝。


 レンは盛大に後悔していた。


 食堂の机。


 並んだ皿。


 パン。


 スープ。


 野菜。


 そして子供。


 子供。


 子供。


 子供。


 子供。


 子供。


 増えていた。


「……」


 レンは無言で財布を見る。


 軽い。


 とても軽い。


 リアが肩を震わせた。


「何ですかその顔」


「計算してた」


「何をです?」


「食費」


 リアは吹き出した。


 カイルも笑っている。


 対して。


 レオ達は緊張していた。


 昨日助けられた。


 だが。


 追い出されるかもしれない。


 そう思っている。


 特にレオは朝から固い顔をしていた。


 レンはスープを飲む。


 そして言った。


「食ったら働け」


 静かになる。


「え?」


「働け」


 レオが顔を上げた。


「追い出さないの?」


「追い出さん」


 あっさりだった。


 レオ達は目を丸くする。


 レンは続けた。


「ただし」


 嫌な予感がする。


「ニートは禁止だ」


「にーと?」


「飯だけ食う奴」


 全員首を傾げた。


「つまり働け」


 話が戻った。


 朝食後。


 仕事の割り振りが始まった。


 最初に選ばれたのはマルだった。


「お前」


「はい」


「力あるな」


 マルは頷く。


 レンは薬草の袋を指差した。


「持てるか?」


 マルは持ち上げる。


 軽々だった。


 リアが驚く。


「え?」


 かなり重い。


 大人でも辛い。


 しかしマルは平然としていた。


「持てます」


 レンが少し笑う。


「じゃあ運搬担当」


 マルは首を傾げた。


 意味は分からない。


 だが。


 少し嬉しかった。


 役割を貰えたから。


 次。


「シーナ」


「はい」


「計算できるか」


「少し」


 嘘だった。


 かなり出来る。


 スラムでは騙されないために必死で覚えた。


 レンは本を数冊置いた。


 商売。


 算術。


 帳簿。


 地理。


 シーナの目が輝く。


「読んでいいの?」


「いいぞ」


 リアが思った。


 あれは絶対ハマる顔だ。


 次。


「トト」


「はい!」


 一番元気だった。


 レンは工房を指差した。


「入るな」


「はい!」


 返事だけだった。


 絶対入る。


 全員そう思った。


 レンも思った。


 次。


「ルウ」


 ベッドの上。


 まだ少し青い顔。


 しかし起きていた。


「はい」


「治るまで寝てろ」


「暇です」


 即答だった。


 レンは少し考える。


 そして薬草を見せた。


「じゃあ覚えるか」


 ルウが薬草を見る。


 興味深そうだった。


「薬?」


「ああ」


 ルウは小さく頷いた。


 その目は真剣だった。


 自分は病気で死にかけた。


 だから知りたい。


 どうして助かったのか。


 どうして病気になるのか。


 どうすれば治せるのか。


 そんな顔だった。


 最後。


「レオ」


「はい」


 レオは背筋を伸ばす。


 レンは少しだけ考えた。


 そして木剣を放った。


 レオが受け取る。


「リア」


「え?」


「任せた」


 リアはレオを見る。


 レオもリアを見る。


「何を?」


「剣」


 それだけだった。


 リアは笑う。


 レオは緊張する。


「よろしく」


「はい!」


 返事だけは立派だった。



 昼。


 皆それぞれ動き始めた。


 マルは荷物を運ぶ。


 シーナは本を読む。


 トトは工房の周囲をうろつく。


 ルウは薬草を眺める。


 レオは木剣を振る。


 カイルは畑。


 リアは指導。



 そして。


 レンの部屋にあった、ぬいぐるみらしきものは全員を観察していた。


『適性を確認』


『興味対象を確認』


『学習速度を確認』


 誰も知らない。


 この日。


 森の家に集まった子供達が。


 未来の王国を支える存在になることを。


 まだ。


 誰も知らなかった。


 ただ一人。


 このぬいぐるみだけを除いて。


『面白くなってきました』


 小さなぬいぐるみは


 誰にも聞こえない声でそう呟いた。



読んでいただきありがとうございます。


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