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第十話 助けるということ

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。

 翌朝。


 リアは目を覚ますと同時に外へ出た。


 気になっていた。


 昨夜見た子供の事が。


 結界の近くまで歩く。


 そして。


 すぐに見つけた。


 子供達だ。


 今日も来ている。


 だが。


 リアの視線は一人の少年へ向いた。


 顔色の悪い子供。


 昨日見た少年だ。


 地面に座り込んでいる。


 顔色はさらに悪い。


 目の焦点も合っていなかった。


「ちょっと」


 リアが声を掛ける。


 反応は無い。


「聞いてる?」


 少年がゆっくり顔を上げる。


 だが。


 返事は無い。


 呼吸も荒い。


 嫌な予感が強くなる。


 リアは思わず唇を噛んだ。


 知っている。


 こういう子供を。


 スラムでは珍しくなかった。


 病気。


 飢え。


 衰弱。


 そして。


 ある日いなくなる。


 それだけだ。



 後ろから足音が聞こえる。


 レンだった。


 いつも通り。


 欠伸をしている。


 リアはすぐに指差した。


「見てください」


 レンは結界の向こうを見る。


 少年を見る。


 他の子供達を見る。


 何も言わない。


 しばらくして。


 小さく息を吐いた。


「そうか」


 それだけだった。


 リアは思わず聞く。


「助けないんですか?」


 レンは答えない。


 代わりに家へ戻る。


 しばらくして。


 木の皿を持って戻ってきた。


 肉とパン。


 結界の外へ置く。


 そして。


 何も言わず帰ろうとした。


「それだけですか?」


 リアが声を上げる。


 レンは立ち止まった。



 助ける。


 簡単な言葉だ。


 昔のレンもそう思っていた。


 困っている奴がいる。


 なら助ける。


 それだけの話だと。


 エターナルでも。


 この世界でも。


 そうやって生きてきた。


 だが。


 この世界がゲームなら。


 もっと心に余裕もあっただろう。


 失敗してもやり直せる。


 死んでも生き返る。


 失う痛みだって現実ほど重くはない。


 だが。


 ここは違う。


 レンは見てきた。


 死んでいく人間を。


 消えていく人間を。


 守れなかった人間を。


 助けられなかった人間を。


 何度も。


 何度も。


 そして。


 たぶん自分も同じだ。


 選択を間違えれば死ぬ。


 油断すれば死ぬ。


 ここはそういう世界だ。


 だから。


 助けるという言葉の重さを知っている。


 飯を与えるだけでは終わらない。


 住む場所を与えるだけでも終わらない。


 最後まで面倒を見る覚悟が必要になる。


 だから。


 軽々しく言えなくなった。


 助けるなんて。



 レンはゆっくり振り返った。


「助けるって何だ?」


 リアは言葉に詰まった。


 レンは続ける。


「飯やるのは簡単だ」


「……」


「一日ならな」


 リアは黙る。


「明日は?」


 答えられない。


「その次は?」


 答えられない。


「住む場所は?」


「……」


「病気は?」


「……」


「働けるようになるまで誰が面倒見る?」


 リアは拳を握る。


 分かっている。


 全部分かっている。


 だから苦しい。


 助けたい。


 でも。


 助ける責任も分かる。


 レンは小さく息を吐いた。


「だから簡単に助けるなんて言えない」


 その言葉は重かった。


 経験者の言葉だった。


 リアは何も言えなかった。



 昼頃。


 カイルがやってくる。


 結界の向こうの子供達を見て。


 少しだけ困った顔をした。


「昔の僕みたいです」


 リアは頷く。


 そうだろう。


 だからこそ。


 カイルは少し考えてから言った。


「でも」


「?」


「助けるなら子供達も働かないと駄目です」


 リアは驚いた。


「どういうこと?」


「僕も助けてもらいました」


 カイルは畑を見る。


「だから今は働いてます」


 畑。


 料理。


 掃除。


 出来ることをしている。


 そのおかげで。


 ここに居られる。


「皆が皆、お客様だったら」


 カイルは苦笑した。


「レンさんが死にます」


 リアは思わず吹き出した。


 それはそうだ。


 レンは断れない。


 だからこそ危ない。



 夕方。


 子供達はまだいた。


 顔色の悪い少年も。


 だが。


 今にも倒れそうだった。


 他の子供達も落ち着かない。


 何度も少年を見る。


 何度もこちらを見る。


 そして。


 何も出来ずにいる。


 リアはその様子から目を離せなかった。


 嫌な予感がする。


 きっと。


 もう時間は残っていない。


 そんな気がした。


 結界の向こう。


 五人の子供達。


 結界のこちら。


 森の家。


 その距離は数歩しかない。


 それなのに。


 まだ誰も踏み出せずにいた。


読んでいただきありがとうございます。


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