第九話 結界の向こう側
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
翌朝。
リアは物音で目を覚ました。
窓の外。
結界の向こう側に人影がある。
「ん?」
寝ぼけた頭で外を見る。
昨日見た子供だった。
しかも一人ではない。
二人。
三人。
四人。
増えている。
「何してるの……」
急いで外へ出る。
結界の内側。
リア。
結界の外。
子供達。
互いに見つめ合う。
気まずい。
すると一番小さな子供が言った。
「いた」
逃げた。
全員逃げた。
「待ちなさい!」
逃げる。
追う。
逃げる。
追う。
途中で諦めた。
「速い……」
リアが肩で息をする。
その後ろから。
「何やってるんだ?」
レンが現れた。
欠伸をしている。
「子供です」
「子供だな」
「昨日の子達です」
「ああ」
予想通りの反応だった。
「知ってたんですか?」
「見たことある」
レンは平然としている。
リアは呆れた。
「放っておいて良いんですか?」
「今は良い」
今は。
その言葉が少し気になった。
◇
朝食後。
リアはカイルと一緒に畑仕事を手伝っていた。
最近の日課だった。
土を整える。
雑草を抜く。
水を撒く。
最初は興味が無かった。
だが意外と悪くない。
その時。
カイルが森の方を見る。
「また来てます」
「え?」
振り向く。
結界の向こう。
昨日の子供達。
木の陰からこちらを見ている。
完全に野生動物だった。
リアが近付く。
逃げる。
止まる。
また見る。
「何なのよ……」
カイルが苦笑した。
「僕も昔あんな感じでした」
リアは少し黙る。
確かにそうかもしれない。
スラムの子供は警戒心が強い。
知らない大人は敵だ。
それが普通だった。
◇
昼頃。
レンが森から帰ってきた。
背中に猪。
腕に薬草。
腰に工具。
いつも通りだった。
「おかえりなさい」
「ただいま」
そして。
結界の向こうを見る。
子供達も見ている。
しばらく無言。
その後。
レンは猪肉を一切れ切り分けた。
結界の外へ放る。
「レンさん!?」
リアが驚く。
子供達も驚いていた。
だが。
誰も近付かない。
「食わんのか」
レンが言う。
返事は無い。
当然だ。
毒かもしれない。
罠かもしれない。
信用できない。
レンは肩を竦めた。
「まあそうだよな」
そして家へ戻る。
リアも後を追った。
「良いんですか?」
「何が」
「持っていかれますよ」
「持っていかれるために置いた」
レンは当然のように答える。
◇
夕方。
リアが様子を見に行く。
肉は消えていた。
そして。
代わりに置かれていた。
木の実が三つ。
「え?」
リアは目を丸くした。
◇
夜。
食卓。
リアがその話をする。
カイルは少し笑った。
「お礼ですね」
「お礼?」
「たぶん」
レンも頷いた。
「律儀だな」
リアは少し驚いた。
スラムの子供がお礼をする。
そんな発想が無かった。
するとレンが言った。
「子供は案外まともだぞ」
「そうですか?」
「大人の方が面倒だ」
リアは否定できなかった。
食事が終わる。
◇
その後。
リアは外へ出た。
夜の森。
静かだった。
結界の向こう。
小さな人影が見える。
昨日の子供達だ。
こちらを見ている。
その中に。
一人だけ。
妙に顔色の悪い子がいた。
年齢は六歳くらい。
立っているのも辛そうだ。
リアは眉をひそめる。
「……」
嫌な予感がした。
昔。
何度も見た顔だった。
飢え。
病気。
疲労。
その全部が混ざった顔。
そして。
そういう子供は。
ある日突然いなくなる。
リアは無意識に拳を握った。
助けたい。
だが。
助ければ終わりではない。
食料。
住む場所。
世話。
責任。
全部必要になる。
それが分かるからこそ。
何も言えなかった。
その時。
後ろから声がする。
「どうした」
レンだった。
リアは結界の向こうを指差す。
「病気です」
レンも見る。
少しだけ表情が変わった。
ほんの少しだけ。
それだけで。
リアは理解した。
このおっさんも気付いた。
そして。
たぶん。
嫌な予感は当たる。
そんな気がした。
夜風が吹く。
森は静かだった。
だが。
静かな日々は少しずつ終わりへ向かっていた。
【エターナルWiki No.005】
■機兵
現在、大陸で最も普及している人型兵器。
国家軍。
騎士団。
冒険者。
傭兵。
様々な勢力で運用されている。
機兵の性能は搭乗者の能力に大きく左右されるため、
優秀な操縦者ほど高い戦闘能力を発揮できる。
主な特徴
・年数がかかるが量産可能
・整備可能
・高級なものも存在しているが、そもそも機兵自体が高価である。
代表機
パワード
ワーウルフ
ビショップ
■魔核機
古代文明が残した超高性能機兵。
現代技術では再現不可能とされている。
国家機密級の存在。
発見されるだけで歴史が変わると言われる。
主な特徴
・極めて希少
・現代では製造不可
・単独で戦局を変える
・搭乗者を選ぶ機体も存在する
代表機
グラム
ティラント
セラフィム
■補足
初心者の間では
「魔核機を手に入れれば最強になれる」
という噂が絶えない。
しかし実際には、搭乗者自身の能力が低ければ十分な性能を発揮できない。
そのため上位プレイヤーほど、まず自分自身を鍛える傾向がある。
読んでいただきありがとうございます。
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