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第八話 森の住人

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。


 朝。


 リアは見慣れない光景で目を覚ました。


 窓の外。


 カイルが畑にいた。


 まだ日も昇りきっていない。


 なのに働いている。


「早いわね……」


 思わず呟く。


 服を着替えて外へ出る。


 冷たい朝の空気。


 森の匂い。


 カイルは黙々と雑草を抜いていた。


「おはよう」


「あ、おはようございます」


 少年は笑った。


 最近よく笑うようになった。


 最初に会った時とは別人みたいだ。


「頑張るわね」


「楽しいんです」


「畑が?」


「はい」


 リアは少し驚く。


 カイルは土を触りながら言った。


「育つのを見るの好きなんです」


 その表情は本当に楽しそうだった。


「スラムでは出来なかったので」


 リアは少し黙る。


 確かにそうだ。


 食べるので精一杯だった。


 何かを育てる余裕なんて無い。


 その時。


 家の方から声が聞こえた。


「カイルー」


 レンだった。


「朝飯ー」


「今行きます!」


 リアは苦笑した。


 子供みたいだ。


 どっちが。


 とは言わない。


 食卓へ向かう。



 今日の朝食はスープとパン。


 そして少しの野菜。


 カイルが育てた物だった。


 レンが野菜を見ながら言う。


「増えたな」


「増えました」


「凄いな」


「レンさんが何もしてなかっただけです」


 レンは少し考えた。


「そうとも言う」


 否定しなかった。


 リアは笑った。


 食事を終える。


 その後。


 レンは工房へ。


 カイルは畑へ。


 いつもの流れだ。


 リアだけ手持ち無沙汰になった。


 少し森を歩く。


 結界の近く。


 風が吹く。


 静かだった。


 スラムでは考えられない。


 誰も怒鳴らない。


 誰も奪わない。


 誰も殴らない。


 ただ静かだ。



「何してる」


 後ろから声。


 レンだった。


 工具箱を抱えている。


「散歩です」


「そうか」


 レンも隣に座った。


 しばらく沈黙。


 風だけが吹く。


 リアが先に口を開いた。


「レンさん」


「ん?」


「何で私を置いてくれたんです?」


 前から聞きたかった。


 助けたのは分かる。


 だが。


 その後まで面倒を見る理由が分からない。


 レンは少し考えた。


 そして。


「放り出したら死ぬだろ」


 あっさり言った。


「……」


「カイルも」


「……」


「多分俺も」


 リアは思わず振り向いた。


「レンさんも?」


「昔な」


 そこで言葉が止まる。


 珍しかった。


 レンが自分の話をするのは。


「街で色々あった」


 短い言葉。


 だが。


 それだけで十分だった。


 リアにも想像できる。


 騙されたのだろう。


 裏切られたのだろう。


 利用されたのだろう。


「だから」


 レンは続ける。


「死にそうな奴見ると放っておけない」


 リアは黙った。


 少し意外だった。


 もっと適当な理由かと思っていた。


「お人好しですね」


「よく言われる」


「自覚あるんですか」


「ある」


 即答だった。


 リアは笑う。


 自覚があるのに治らないらしい。



 その時。


 結界の向こう側。


 小さな影が見えた。


 子供だった。


 汚れた服。


 痩せた体。


 すぐに森の奥へ消えていく。


 リアは目を細める。


「今の……」


「ああ」


 レンも見ていた。


「スラムの子だな」


「ここまで来るんですか?」


「たまに」


 レンは立ち上がる。


「食い物探してる」


 リアはその背中を見た。


 少しだけ。


 嫌な予感がした。


 レンはそういう子供を放っておけない。


 きっと。


 また何かやる。


 そんな気がした。


 だが。


 今はまだ。


 何も起きない。


 静かな森。


 穏やかな日常。


 それが続いている。


 だからこそ。


 リアは気付かなかった。


 自分がもう。


 この場所を帰る場所だと思い始めていることに。


読んでいただきありがとうございます。


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