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第六話 工房という名の魔窟

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。


 翌朝。


 リアは違和感で目を覚ました。


 静かだった。


 いつもなら。


 レンが何かを壊している音がする。


 工具の音。


 金属音。


 爆発音。


 たまに悲鳴。


 それが無い。


「珍しい……」


 ベッドから起き上がる。


 部屋を出る。


 すると。


 カイルが既に朝食を作っていた。


「おはようございます」


「おはよう」


 リアは周囲を見回した。


「レンさんは?」


「工房です」


「ああ」


 納得した。


 いつものことだった。


 朝食を終え。


 二人で工房へ向かう。



 家の裏。


 少し離れた場所。


 レンが知らぬ間に増築した建物だ。


 リアは今まで中へ入ったことが無かった。


「そういえば」


 カイルが言う。


「僕も中は初めてです」


 嫌な予感しかしない。


 扉の前。


 コンコン。


 ノックする。


「レンさん?」


 返事が無い。


「生きてますか?」


 しばらくして。


 中から声がした。


「たぶん」


 生きているらしい。


 二人は扉を開いた。


 そして。


 固まった。


「……」


「……」


 広かった。


 外から見たより。


 明らかに広い。


「え?」


 リアは思わず声を漏らした。


 工房のはずだ。


 なのに。


 倉庫。


 作業場。


 保管庫。


 解体場。


 全部ある。


 しかも広い。


「何これ……」


「結界」


 奥からレンの声。


 説明になっていない。


 二人は進む。


 そして。


 もっと驚いた。


 壁一面に機兵の腕。


 別の棚には脚。


 さらに頭部。


 胸部装甲。


 関節。


 魔石。


 金属部品。


 何か分からない物体。


 完全に異常空間だった。


「ゴミ屋敷?」


 リアが呟く。


「宝の山だ」


 即座に反論が飛んできた。


 レンだった。


 机の下から出てくる。


 顔が真っ黒。


 煤だらけ。


 寝不足。


 ひどい顔だった。


「何してたんですか」


「整理」


 リアとカイルは周囲を見る。


 どう見ても整理されていない。


「これが?」


「これが」


 本人だけは真剣だった。


 カイルが棚を見る。


「この腕は?」


「機兵」


「こっちは?」


「機兵」


「その箱は?」


「機兵」


「全部?」


「全部」


 リアは頭が痛くなってきた。


 レンは嬉しそうだった。


「見ろ」


 そう言って一つの脚部を持ち上げる。


「これが例の機兵の脚だ」


 詐欺団のボスが乗っていた機兵。


 あの機体の残骸だった。


「売らないんですね」


「売るわけないだろ」


 レンは即答した。


「もったいない」


 またそれだ。


「壊れてるじゃないですか」


「だから良いんだ」


「何でです?」


「分解できる」


 リアは理解を諦めた。


 レンは本気で楽しそうだった。


 まるで子供である。



 その時。


 カイルが棚の奥を見る。


 そして。


「レンさん」


「ん?」


「この紙は?」


 設計図だった。


 大量にある。


 山になっている。


 レンが一瞬固まった。


「あ」


 嫌な予感がした。


 リアも見る。


 設計図。


 設計図。


 設計図。


 そして。


 一枚を手に取る。


「浮遊島計画?」


 レンが目を逸らした。


「レンさん」


「うん」


「これ本気なんですか?」


「本気だが?」


 即答だった。


 カイルも固まる。


 リアも固まる。


「空飛ぶ島ですよ?」


「そうだな」


「こんなの作れたとして、どうするつもりですか?」


「住みたい」


 迷いが無い。


 リアは思った。


 この人は駄目だ。


 色々駄目だ。


 さらに設計図を見る。


「自走式荷車」


「試作中」


「魔力冷蔵箱」


「失敗した」


「全自動洗濯機」


「途中」


「移動式浴槽」


「ロマン」


 ロマンらしい。


 もう何も言うまい。


 リアはそう決めた。


 その時だった。


 カイルが机の隅を見る。


 そこに。


 一冊のノートがあった。


 開く。


 そこには。


 細かい字がびっしり書かれていた。


『魔核代替案』


『人工魔核研究』


『結界圧縮』


『魔力固定化』


 リアには分からない。


 だが。


 カイルも何となく理解した。


 これ。


 凄い研究なのでは?


 レンは慌てて取り返した。


「触るなよ?」


「凄い物なんですか?」


 リアが聞く。


 レンは少し考える。


「いや・・」


 そして。


 いつもの顔で笑った。


「ただの趣味だ」


 その言葉に。


 リアは少し呆れた。


 この家。


 この工房。


 この結界。


 全部趣味。


 そんな馬鹿な話があるだろうか。


 だが。


 レンならある気がした。



 離れの工房からの帰り道。


 カイルが小さく呟いた。


「レンさんって」


「うん」


「凄い人なんですね」


 リアは少し考えた。


 そして。


「凄い変人ね」


 そう答えた。


 カイルは笑った。


 リアも笑った。


 そして二人とも知らなかった。


 工房の一番奥。


 誰も近づかない場所。


 黒い布で覆われた巨大な影。


 そこに。


 ネストが静かに眠っていることを。


読んでいただきありがとうございます。


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