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第二十話 ミズガルズ

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。

 ジンと名乗ったドワーフの後を、俺たちは黙ってついて歩いていた。


向かう先は――。


あの巨大な扉。


今まで何度も遠目に見て、近づくことを避けてきた場所。


どう考えても危険だと、本能が告げていた場所だった。


その前に立つ。


近くで見ると、ますます異質だ。


白い壁。


継ぎ目一つ見当たらない巨大な扉。


どこか冷たく、無機質な存在感。


まるで、この世界のものではないように思えた。


『儂は、ジン。』


ドワーフは振り返り、胸を張った。


『ドワーフ族のヴェルグだ。』


そして、隣の巨大な獣の首を軽く叩く。


『こっちは相棒のハチ公。由緒ある名だ。』


「……。」


名前の由緒が気になったが、今はそれどころではない。


ちなみに後から聞いた話では、ヴェルグとは――


機械工兵。


幻獣使い。


技術者。


それらを兼ね備えた、ドワーフの中でも選ばれた者に与えられる称号らしい。


つまり、エリートだ。


……ハチ公については、最後まで由緒が分からなかった。


「どうして俺たちを連れていく?」


俺の問いに、ジンは肩を竦める。


『危害は加えん。』


『さっき言っただろう。興味があると。』


「……。」


『それに、お前さんらも聞きたいことが山ほどある顔をしておる。』


それは否定できなかった。


俺は、先ほど見た光る柱のことを思い出す。


「あの柱の文字……。」


『ああ。』


ジンは頷く。


『儂にもよく分からん。』


『昔はもっといっぱいあったぞ。』


「分からない……?」


『儂らが生まれるより前からあるものだからな。』


『全部を知っている者など、もうおらん。』


そう言いながら、ジンが扉へ手をかざした。


その瞬間。


ブゥン……


低い音が響く。


「……!?」


俺たちの目の前で。


壁だったはずの巨大な扉が、光の粒になって消えていった。


「な……。」


声が出ない。


ジンだけが、慣れた様子で歩き出した。


『さぁ。この先だ。』



俺たちは、半ば呆然としながら後をついていく。


不安。


困惑。


そして少しの恐怖。


いろいろな感情が胸の中を渦巻いていた。


長い通路だった。


しかし。


歩き始めてすぐに、異変に気付く。


ピッ。


ピッ。


俺たちの歩みに合わせるように、両側の壁が淡く発光した。


「……。」


また一歩。


ピッ。


さらに前方が明るくなる。


「……なんだこれ。」


遺跡都市とは、まるで違う。


石造りではない。


木でもない。


金属のような。


しかし、金属とも違う。


どこまでも滑らかな壁。


天井に走る光。


そして。


不思議な静けさ。


それは、前の世界で見た映画の――。


「……SFみたいだ。」


思わず、口から漏れた。


サクラも、目を丸くしている。


ツバキに至っては、完全に俺の服を掴んでいた。



どれほど歩いただろうか。


やがて。


通路の先が開ける。


俺たちは、そこで足を止めた。


「……。」


「……え?」


言葉が出ない。


そこは。


地下とは思えない空間だった。


高い天井。


そこから降り注ぐ柔らかな光。


まるで、空があるかのような明るさ。


そして。


中央には、一つの巨大な塔がそびえ立っていた。


白く。


どこまでも高い。


見たことのない素材でできた塔。


その周囲には――。


「……村?」


いや。


集落だった。


小さな家々。


煙突。


畑。


工房のような建物。


そこには、確かに人の営みがあった。


『ようこそ。』


ジンが振り返る。


そして、少し誇らしげに笑った。


『ドワーフの里――』


『ミズガルズへ。』


「……。」


「……。」


「……。」


俺たちは、しばらく言葉を失っていた。


地下のさらに下。


誰もいないと思っていた世界の奥底に。


こんな場所があったなんて。


『さて。』


ジンが両手を広げる。


『まずは飯でも食いながら話をしようかの。』


その顔には、敵意はなかった。


ただ。


珍しい客人を迎える老人のような、優しい笑みだけがあった。


その笑顔を見て。


ようやく俺たち三人も、少しだけ肩の力を抜くことができたのだった。


読んでいただきありがとうございます。


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