第十八話 長い季節
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
それから、どれほどの時が流れただろうか。
半年か。
それとも一年か。
地下にいると季節が分からない。
朝も夜もない。
ただ、三人で起きて、食べて、探索して、眠る。
そんな日々を繰り返していた。
◇
最初は恐る恐る進んでいた下層も、今では随分と様変わりした。
壁には簡単な地図が貼られ。
探索済みの場所には印が付けられている。
どこに何があるか。
どこが危険か。
どこで採集ができるか。
今では大体把握できていた。
「……ここも終わり。」
俺は地図に新しい線を書き込む。
これでまた一つ、空白が埋まった。
◇
結局。
あの巨大な扉の先へは、一度も行かなかった。
どうしても嫌な予感がする。
三人とも、同じ意見だった。
だから、それ以外の道を片っ端から探索した。
上へ続く階段。
下へ向かう坂道。
崩落した通路。
行き止まりの部屋。
そして。
今まで見たことのない建物。
何もない場所など、一つとしてなかった。
◇
便利なものも、たくさん見つかった。
丈夫な金属の容器。
よく切れる刃物。
保存に使えそうな箱。
用途は分からないが、何かに使えそうな道具。
地下都市のガラクタ置き場も、随分と賑やかになっていた。
「そのうち、全部使い道が分かるんだろうか。」
そう思いながらも、結局ほとんどが飾りになっている。
◇
狩りも安定した。
狼に似た魔物。
大蜥蜴。
地下に棲む鳥。
そして魚。
肉には困らなくなった。
保存食の蓄えも十分だ。
木の実もある。
薬草もある。
もう、生きるだけなら何も困らない。
◇
そして何より――。
食事が美味い。
「……うまい。」
思わず声が漏れる。
今日の夕食は、魚の焼き物に野菜の汁物。
それと、木の実を潰して作った団子のようなもの。
どう見ても和食だ。
異世界なのに。
地下なのに。
どうしてこうなる。
「さすが、元同郷……。」
思わず呟いてしまう。
サクラが首を傾げた。
「いや、何でもない。」
もちろん通じない。
だが、最近では言葉が通じなくても、なんとなく会話になっていた。
◇
ツバキが、魚を頬張りながら笑っている。
サクラも、そんな妹を見て微笑む。
それを見ていると。
不思議と、心が落ち着いた。
「……。」
いつの間にか。
ここが、自分の居場所になっていた。
上へ戻る必要もない。
戦争もない。
誰かに追われることもない。
食べる物もある。
眠る場所もある。
隣には、気を許せる仲間がいる。
「……。」
俺は焚き火を見つめた。
火が、ゆらゆらと揺れている。
「このまま……。」
小さく呟く。
「このまま、ここで暮らすのも悪くないか。」
言葉は通じない。
それでも、サクラがこちらを見た。
少しだけ、驚いた顔をしている。
そして。
ふっと笑った。
その顔を見て、俺も笑ってしまう。
◇
その夜。
いつものように三人で眠りについた。
だが――。
翌日。
それまでの日常を変える出来事が起こる。
◇
探索の帰り道。
俺は足を止めた。
「……。」
何かいる。
気配。
魔物ではない。
今まで感じたことのないものだった。
サクラも気付いたらしい。
ツバキの表情も強張る。
しばらくすると。
遠くから、低い足音が聞こえてきた。
ドス……。
ドス……。
何か大きな生き物だ。
俺は二人を後ろへ下がらせた。
そして、機兵を前へ出す。
やがて。
木々の向こうから、その姿が現れる。
「……犬?」
いや。
犬にしては大きすぎる。
馬ほどもある、巨大な獣。
だが。
俺が驚いたのは、その背中だった。
「……。」
「……え?」
そこには。
一人の人影が乗っていた。
小さい。
人間より、ずっと背が低い。
髭。
頑丈そうな服。
そして。
腰には見たことのない武器。
その人物も、こちらを見て固まっていた。
しばらくの沈黙。
やがて。
小さな人影が、ゆっくりと口を開いた。
「……ほう。」
その声は。
今まで聞いたことのない言葉だった。
けれど。
なぜか。
その表情だけは――。
驚いているように見えた。
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