第十七話 分岐点
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
神殿を後にして、俺たちは再び下層の探索を続けていた。
あれから数日。
この階層の地図も、少しずつ形になり始めている。
石畳の道。
小川の流れる場所。
魔物の縄張り。
採集できる木の実や薬草の場所。
紙いっぱいに書き込まれた地図を見て、少しだけ達成感を覚える。
「結構広いな……。」
最初は生き残ることに必死だった。
それが今では、探索そのものを楽しめるくらいには余裕が出てきていた。
◇
その日も、いつものように道なりに進んでいた。
だが。
「……ん?」
俺は足を止めた。
石畳の道が、そこで途切れていた。
いや。
正確には――。
分かれていた。
「これは……。」
右。
左。
正面。
さらに坂を下る道。
上へ向かう階段。
崩落して途中で塞がった通路。
今まで一本道だった地下都市が、突然迷宮のような姿を見せ始める。
「急に増えたな……。」
後ろからサクラとツバキもやって来る。
二人も驚いているようだった。
◇
そして。
その中心に、それはあった。
「……。」
巨大な扉。
今まで見てきた石造りの建物とは、何もかもが違う。
白い壁。
滑らかな表面。
風化した様子がほとんどない。
まるで。
そこだけ別の世界が切り取られているようだった。
「なんだ……ここ。」
近づく。
壁に触れてみる。
冷たい。
石でも金属でもない。
見たこともない素材だった。
扉は閉じている。
押しても引いてもびくともしない。
そして。
静かだ。
この場所だけ、音が死んでいるような気がした。
◇
サクラが紙を差し出してくる。
『こわい』
その一言に、思わず頷いてしまう。
「……分かる。」
ツバキも、俺の服の裾を掴んでいた。
怯えているらしい。
普段は好奇心旺盛な子なのに。
俺はしばらく扉を見上げた。
行こうと思えば、行けるかもしれない。
でも。
嫌な予感がする。
それも、とびきりの。
冒険者の勘。
そんな曖昧なものだが、今までそれに助けられてきた。
◇
俺は紙を取り出す。
『ここから先はやめよう』
サクラがすぐに頷く。
『うん』
ツバキも、こくこくと何度も頷いた。
全員一致だった。
「探索は……。」
俺は小さく笑う。
「帰れる時に帰るのが基本だ。」
二人には意味は伝わらない。
それでも、俺が帰ると言ったことだけは分かったらしい。
少しだけ安心したような顔をした。
◇
俺たちは、その場を後にすることにした。
だが。
帰ろうとしたその時。
「……。」
ふと。
俺はもう一度だけ振り返った。
巨大な扉。
その上。
何かが刻まれている。
文字……?
だが遠い。
ここからでは読めない。
「……気のせいか?」
首を傾げる。
結局、それ以上気にすることなく歩き出した。
◇
その頃。
扉の向こう側。
誰もいないはずの場所で。
小さな光が、一瞬だけ灯っていた。
そして。
何かを待つように。
再び静寂へと沈んでいく。
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