第十五話 迷宮の地図
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
地下都市での生活にも、少しずつ慣れてきた。
俺たちが拠点にしている場所から半径一、二キロほど。
その範囲には、今のアストラ王国とも、新人連合国とも違う建物が乱立していた。
……いや、乱立していたのだろう。
今では、そのほとんどが瓦礫だ。
かろうじて建物の形を残しているもの。
完全に崩れ落ちているもの。
壁だけが立っているもの。
様々だった。
ただ一つ、共通していることがある。
「何に使ってたのか、さっぱり分からん。」
俺は拾い上げた金属の板を見つめた。
穴がいくつも開いている。
何かの部品だろう。
だが、何の部品なのかは分からない。
こういうガラクタは、探索していると時々見つかる。
他にも。
小さな箱。
用途不明の棒。
薄い板。
どれも見たことがないものばかりだ。
結局、使い道が分からず、その辺に積まれていく。
◇
それでも、探索の目印はあった。
石畳だ。
建物は崩れていても、道だけは比較的形が残っている。
だから俺たちは、その道を基準に探索を進めていた。
途中。
地下へ向かう階段もいくつか見つけた。
緩やかな坂道もある。
だが。
「……全部、崩れてるな。」
途中で土砂に埋もれていたり。
天井が落ちていたり。
先へ進める場所は限られていた。
この地下都市。
思っていたより、ずっと広い。
そして、まだまだ秘密がありそうだった。
◇
「……。」
俺は後ろを振り返る。
そこには。
見違えるほど綺麗になったサクラとツバキの姿があった。
あのボロボロの服は、もうない。
今、二人が着ているのは自作の服だ。
草の繊維。
蔦。
そして、芋虫みたいな虫が出す糸。
それらを使って、いつの間にか服を作ってしまった。
しかも。
かなり出来がいい。
「……恐ろしい生産能力だ。」
思わず呟く。
数日前。
サクラに頼まれて、ガラクタを使って作ったものがある。
糸車。
針。
そして、小さなナイフ。
それだけだ。
それだけ渡した結果が、これである。
もはや職人だ。
いや、下手な職人よりすごいかもしれない。
しかも、デザインまで凝っている。
長い袖。
重ね着。
腰の帯。
どこか和服の着物に似た服装だった。
その姿は、エルフというより……。
「……巫女?」
そんな感じだった。
◇
そして。
今、二人の背中には長弓がある。
もちろん俺が作った。
正確には、俺が作れる範囲で、それっぽいものを作った。
理由?
単純だ。
「エルフと言えば弓だろ。」
完全に俺の趣味である。
使えるかどうかは分からない。
だが、持っているだけでも雰囲気が出る。
……そう思っていた。
しかし。
「そうじゃないんだよなぁ。」
思わず口から漏れる。
和服。
長弓。
黒髪のエルフ。
何だろう。
この違和感。
弓使いというより――。
「弓道家だな。」
そう。
まるで、前の世界の弓道部みたいなのだ。
サクラが首を傾げる。
『?』
「いや、なんでもない。」
もちろん通じない。
俺は苦笑した。
◇
最近は、三人で探索へ出ることも増えた。
二人の体力もかなり戻った。
少しずつだが、笑うことも増えている。
今のところ。
魔獣の類とは遭遇していない。
危険な生き物もいない。
むしろ、この広い地下都市が静かすぎるくらいだった。
だからこそ。
今日は少し遠くまで行くことにした。
俺は機兵へ乗り込む。
「よし。」
ゴウン。
低い駆動音が響く。
そして後ろへ向かって手を振った。
『後ろをついて来い』
サクラが頷く。
ツバキも元気よく手を上げた。
俺は機兵を先行させる。
石畳の道は、まだまだ先へ続いていた。
崩れた建物の向こう。
暗い地下都市の奥へ。
そこには、まだ見ぬ何かが待っている。
そんな予感がしていた。
そして――。
その日の探索が。
俺たちを、地下都市の新たな一面へ導くことになる。
読んでいただきありがとうございます。
面白かったら評価、ブックマークで応援していただけると嬉しいです。




