第99話 知夏_仕事を忘れた瞬間
ゆっくりと指や口を使って丁寧に攻めてくれる。丁寧すぎて少しじれったいくらい。それでも優しく触れられることが心地よくてそっと目を閉じた。
優太さんが私の足の間に手を伸ばす頃には恥ずかしいくらい潤っていた。彼の指の動きに合わせてお腹の奥底から急激な勢いで快楽がせり上がってくるのを我慢する間もなく、私はあっという間に絶頂を迎えてしまった。
私は目を閉じて体中の血が速く巡っているのを感じた。一つ一つの細胞が急に意識を持ちはじめたかのように、じんじんと動いている。
あまりの速さに驚き、恥ずかしすぎて手で顔を覆うとベットに突っ伏した。
私はどちらかと言えば遅漏気味だと思う。他の女性と比較したわけじゃないから断言はできないが、お客様とのベットプレイで絶頂を迎えることは稀だ。
なぜなら私は少しでも何かしら心に引っ掛かりがあると達することはできず、プレイ中は常にお客様のことを考えているため無心になれることはほとんどない。だから私はよりリアルに絶頂を迎えた演技ができるよう、常日頃からアンテナを張っていた。
仕事中だということを忘れて、心地よさにうっとりと目を閉じてしまった自分に心の中で頭を叩きたい気分だった。
突っ伏している私をそっと仰向けにし、私の顔が見えるよう手をどかした優太さんの眼差しは優しさに溢れていて、嬉しさがにじみ出ていた。
男性が女性との性行為において自尊心が満たされる条件の一つに、相手をいかせること、が間違いなく含まれていると思う。だから、私は必ずいったフリを行うし、それでお客様が喜ぶなら安いもんだ。彼とのプレイもフリをする気満々だったがその必要が無いことに私自身、驚きと戸惑いを隠せない。
私にキスをしながら再び足の間をいじり始めた優太さんに抵抗を示すものの、あっという間に快楽の海に押しやられた。中に入っていた優太さんの指が抜かれる頃には仕事中ということが頭から完全に抜け落ち、心地よい痺れを感じながらぐったりとしていた。
おそらく優太さんは軌道修正が上手いんだろう。相手の反応を見ながら相手にとって一番良い場所、一番良い方法を模索しているのがよく分かる。
私の手と口によるサービスがお客様から高評価を受け、多くのリピート客に恵まれるようになった理由の一つは、軌道修正をとにかく意識したからだと思う。お客様にとって気持ち良いと思うポイントはそれぞれ異なる。それを探しあて、ひたすらに尽くす。
しかし、優太さんは水商売をしているわけでもその道のプロというわけでもない。ひたすら丁寧に相手のことを想っていないと、こういう攻め方はできない。
性欲を解消しにきた立場のお客様が、本来サービスを提供する側の風俗嬢にここまで尽くしてくれる、自分のことよりも相手のことを優先して考えられる人なんだろうな、と痺れる頭で思った。
少し上体を起こして枕元に置いてあるゴムを手に取ると、優太さんに渡した。優太さんは一瞬驚いた顔をしたものの、少し泣きそうな笑顔で私に覆いかぶさると、優しくキスをした。
私なりのお礼というわけではないけれど、久々に気持ち良い感覚にゆったりと身を沈めることができた。この仕事をしているとプライベートで金銭が絡まない肉体関係がアホらしく思えてしまうので、私は風俗嬢に転職してから一度もプライベートで他人と肉体関係を持っていない。常連のお客様で相性が良い方もいるけれど、それは私が歩み寄った上で成立する相性の良さだ。
ありのままの状態で身も心も寛げたのは本当に久々だった。だから、相手が求めてくる前に私から求めた方が、相手からしたら嬉しいであろうと思ってゴムを手渡した。




