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第90話 知夏_真面目な人の選択

 優太さんは私が銀座線に乗ることを知ると、人込みを縫うように進みながら銀座線の入り口まで見送ってくれた

 別れ際、私は手土産が入った紙袋を渡した。

「今日はごちそうさまでした。良かったらそのお礼」

「え!いいの?」

 大きな声に道行く人が何人か振り向いた。

「これ、お茶漬け。一人暮らしってこの前教えてくれたから、お菓子より簡単に食べれるご飯系のものが良いかなと思って」

「ありがとう。お茶漬けすごく好き」

 こんなに喜んでもらえるなんて買った甲斐があった。そしてずっと気になっていたことを聞いてみた。

「それにしても、どうして私なの?」

 優太さんは一瞬きょとんとすると、すぐに意図を理解したようで教えてくれた。

「莉奈さん、すごく真面目な人だよね。」

 意味が分からず、首をかしげると優太さんはすぐに話しだした。

「偏見かもしれないけど、こういう仕事してる人って男の性欲を満たせばいいんでしょ、って思っている人が多そうなイメージだったんだけど、莉奈さん、そんな感じではなかったし、初めて会った時に俺の緊張を何とかしようとすごく気を使ってくれたのがわかったから。今日、一緒に飲んでいてすごく楽しかったし、なんだかこんな俺でも受け止めてくれそうな気がして。安心して甘えられると思ったから。」

 そう言われて悪い気は全くしない。ただ私が心配していたよりも私との時間に満足感を覚えてくれていたようで安心した。

「そう言ってもらえてよかった。今日はありがとう」

 お辞儀をした私に丁寧に優太さんも頭を下げてきた。

「こちらこそありがとう。またお店に連絡するね」

 会釈をしながら銀座線の改札口を通り階段を登る直前で振り返ると、まだ優太さんは改札の前に立って見送ってくれていた。私が小さく手をふると彼も手を振り返してくれた。

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