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第89話 知夏_彼女のために

 彼女さんは小学生の頃からずっとバレーボールをやっており、今でも社会人チームで活動しているそうだ。大学時代、同じサークルで知り合ったことがきっかけで仲良くなり、ずっと飲み友だったらしい。

 社会人になってからもたまに複数人で飲みに行ったそうだが、優太さんの会社が直営店をオープンするにあたって、内装を手掛けた会社が彼女さんの勤め先だった。それがきっかけで2人で飲みに行くようになったらしい。1年半の片思いを経て、晴れて交際スタート。今、彼女さんは一級建築士の取得を目指して猛勉強中のため、月に1回しか会えてないという。

「写真ないの?見たいな」

 私の要望に優太さんは携帯のアルバムから、写真を選んで見せてくれた。それを見て私は思わず「え!美人!」と驚いた。ショートカットが良く似合う小顔に大きな瞳、どこかの観光地なのか歴史的な街並みを背景にこちらに向かって微笑んでいる。

「すごいスタイルいい。背、高いね」

 モデル並みの等身で羨ましい。

「170センチあるから、女性にしては高いかもね」

「いいなぁ。名前、なんていうの?」

「ゆず」

「かわいいね」

 スタイルがよく美人で、一級建築士を目指すほど仕事に打ち込んでいる。きっと努力家なんだろうな。これだけ美人ならさぞかし様々な男性に言い寄られたことだろう。彼女の性質上、きっと不愉快な思いをすることも多かったのではないだろうか。

「てか、ごめん。自分ばっかり話してて。もう時間だよね」

 そう言われて腕時計を確認すると19時になる頃である。外はすっかり日が暮れており渋谷の夜景が一面に広がっていた。話にのめり込み過ぎて、すっかり時間管理をしていなかったことに気が付いた。

「時間、気にさせてこっちこそごめん」

「全然大丈夫」

 優太さんはウェイターを呼ぶとお会計を済ませ、私がソファーから立ち上がりやすいように手を差し出してくれた。自然と手につかまりソファーから立ち上がりながら、ナチュラルにエスコートできる人なんだな、と思った。


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