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第82話 優太_渋谷駅で見送る背中

 清算を済ませ、渋谷駅までの道すがら俺はゆずについて話をした。問題が解決したわけじゃないけれど、それでも静かな気持ちで話すことができた。

 銀座線に乗る莉奈さんを改札口まで見送る。ヒカリエの正面入り口を通り越しオレンジ色が鮮やかな改札口に着くと、莉奈さんは鞄から手のひらサイズの箱を紙袋に入れて差し出してきた。

「今日はごちそうさまでした。良かったらそのお礼です。」

「え!いいんですか?」

 驚いて大声が出る。慌てて口をつぐんだ。

「中身、お茶漬けです。男性の一人暮らしと伺っていたのでお菓子より簡単に食べれるご飯系のものが良いかなと思って。」

「ありがとうございます。お茶漬け大好きです」

 え、普通に嬉しい。俺は喜んで紙袋を受け取った。

「ちなみに、どうして私なんですか?」

 真顔で問いかけてくる莉奈さんの質問の意味が分からず、なんの話だ?と考えるが、なぜ私を指名したのか、という意味合いかなとあたりをつけて答えた。

「莉奈さん、すごく真面目な人ですよね。」

 ん?という顔をする彼女に、思ったことをそのまま伝える。

「偏見かもしれませんがこういう仕事してる人って男の性欲を満たせばいいんでしょ、って思っている人が多そうなイメージがあったんですが、莉奈さん、そんな感じではなかったし、初めて会った時に俺の緊張を何とかしようとすごく気を使ってくれたのがわかったので。今日、一緒に飲んでいてすごく楽しかったし、なんだかこんな俺でも受け止めてくれそうな気がして。安心して甘えられると思ったんです。」

「そう言って頂けて嬉しいです。今日はありがとうございました」

 莉奈さんは丁寧に頭をさげた。慌てて俺も頭を下げる。

「こちらこそありがとうございました。またお店に連絡します。」

 会釈をしながら改札を通っていく莉奈さんを目で見送る。小柄な背中が急に振り返ったかと思うと、俺に向かって小さく手を振っている。俺は嬉しくなって手を振り返した。



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