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第8話 優太_結婚するか別れるか

「付き合って2年だっけ?なんで結婚しようと思ったの」

 大和の浮気話を途中で打ち切り、千早が訪ねた。

「子供を産むなら早めに生みたいっていう彼女の希望で」

 はにかみながら答える圭介に大和がなんで?と聞いた。

「彼女、年下だよね?まだ若いじゃん」

「1個下なんだけど、普通の人に比べると妊娠できる期間が短いんだって」

「それはなにか持病的な問題で?」

「まぁ、生まれつきみたい」

 ここにいる全員が初めて耳にする話題なのだろう。黙って圭介を見つめた。

 ちょうどその時、頼んだ料理が運ばれてきたので取り皿と箸を渡したものの誰も手を付けることなく話の続きを促した。

「俺も初めて彼女から聞いた話なんだけど、その女性の卵子って生まれた時にいくつ持っているのか数が決まってて、後は消費していくんだって。彼女、絶対に子供が欲しいって言ってたから病院で色々調べてもらったら、残りの卵子が少ないってことが分かったらしい」

 へぇと一同頷いた。女性の卵子について考えたことなど一度もないので全くの初耳だ。

「でも、医学の力で増やしたりとかできるんじゃないの?」

 なんとなくのイメージで質問をすると、圭介は残念そうに首をふった。

「それができないらしい。卵子の質を上げることはできるみたいだけど…」

 ランシノシツってなんだ?

「それで彼女からプロポーズされたの?」

 千早がつまみ用に頼んだ塩辛をつっつきながら聞いた。

「いや、彼女に『私は他の人に比べると時間がないから早く子供を産みたい。だから結婚するか別れるか決めて』って言われた。」

「おぉ、強い」

「元々、彼女との結婚は考えてたけどもうちょっと時間が経ってからでもいいかなって思ってた。けど、まぁ、俺も結婚して子供欲しいからちゃんとプロポーズしようと思ってさ」

 マジかぁと大和がつぶやいた。

「どうやってプロポーズしたの?」

 気になって聞いてみると、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに、得意げに圭介は鼻の穴を膨らませる。

「夜景が見えるレストランで、指輪と花束を渡して『結婚してください』っていいました」

「めっちゃベタじゃん」

「ドラマかよ」

 次々に突っ込まれる笑いに、まぁまぁひがむな野郎ども、と余裕の態度である。

「じゃあ、圭介はすぐに父親になるわけだ」

 感心したように言う千早に、圭介は肩をすくめて答えた。

「子供がいつできるかなんてわかんないよ。それに俺も検査受けなきゃいけないし」

「え、なんの検査?」

「精子の検査」

「なにそれ」

 無知すぎる俺たちに圭介は簡単に説明してくれた。精子の数、動きの活発さなどを調べて自然妊娠できるかどうか調べることができ、もし精子の数が少なかったり、運動率が低いと体外受精をした方が良い、という結果が分かるそうだ。

「それって、もし精子の数も少なくてほとんど動かないやつばかリなら中に出しても、妊娠しないってこと?生でできるじゃん」

 いいこと聞いた、と言わんばかりの大和に俺と千早は速攻で突っ込んだ。

「お前、最悪・・・」

「浮気相手でも風俗嬢相手でも避妊はしろよ」

 そんな大和に笑いながら圭介はため息をついた。

「彼女の言ってることはわかるし、時間がないから焦る気持ちもわかるんだけど検査受けたくないんだよねぇ」

 それには大いに頷いた。先ほどの圭介の説明は理解できる。しかし、抵抗感の方が大きすぎるのだ。

「彼女にはなんて言ってるの?」

「まぁ、検査するのは結婚式挙げてからでもいいんじゃない、ってとりあえず言ってある。彼女も妊婦の状態でウエディングドレスは着たくないって言ってるし」

 そっか、と相づちを返すと大和がほうれん草のお浸しが入った小鉢をどうぞと圭介に差し出した。

「精子には亜鉛が不可欠だから南瓜の種がいいよ。種はフライパンで炒れば殻が向きやすくなるから。あとはほうれん草やブロッコリーあたりがビタミン多めでオススメかな。あとは…」

 うんちくが炸裂しそうなところで俺はため息をついた。

「お前、デリカシーなさすぎ」

「そうだぞ。まだ圭介の種が死んだとは決まっていない」

「千早、言い方」

 そんなやり取りに当の本人は大爆笑しはじめた。

「もし俺の精子が役立たずだったら、大和の知識をあてにするよ」

 圭介もたいがいお人好しである。


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