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第7話 優太_友人のめでたい報告

「ついに優太も営業から卒業かぁ」

 左斜め前に座っている大和が俺も部署移動してー、と言った。

 ずっと企画部への異動希望を出しては毎年営業部に残留だったが、企画部部長から来年からはウチに来いとお声がかかり、ずっと希望していた部署に異動できるかと思うとGWを仕事についやしたかいがあるというものだ。

 彼女であるゆずと会う時間を作れなかったことは申し訳ないが、向こうも客先のイベントに行かなければならないと言っていたのでおあいこだろう。

 ビールと付け出しのそら豆の丸焼きが出てきたところで、圭介がビールを高々と掲げた。

「えー、それでは皆様、俺の婚約を祝して乾杯!」

 ゴールデン中にプロポーズをした圭介は彼女との婚約が決まり幸せオーラ全開である。おめでとう、と次々に口にしながら良く冷えたビールをあおった。

「あー、うまいっ!」

 ちまちまとそら豆の甘皮をむいていると大和が、もったいない!と声を上げた。

「そら豆の甘皮にはたっくさんの栄養素が詰まってるんだぞ!食物繊維は腸内環境を整えてくれるし、ポリフェノールは免疫力を高めてくれる。ビタミンとミネラルも含まれているから美容にもいい。そもそもそら豆には豊富タンパク質が含まれており…」

「おぉ、始まったよ」

 千早がめんどくさそうにつぶやいた。

 同じ営業部に所属している大和はかなりの美容オタクである。ダイエットやスキンケア、髪の毛ケアだけにとどまらず美的な健康生活とやらにこだわって過ごしているらしい。

 しかし、本人がもつ野菜や果物の知識は感心に値するもので、趣味が高じて野菜ソムリエの資格を取っただけでなくSNSで美味しい野菜の見分け方、栄養素を損なうことなく野菜を調理するためには、等といった情報を発信している。

 フォロワー数は一般人の俺から見たら驚くような数字であり、うんちくはかなり鬱陶しいがその豊富な知識は営業マンとしては強力な武器だ。

「というかなんで千早が広報に異動なんだよ。どう考えたって俺の方が適任だろ」

 不満たらたらで大和が、俺の方が情報発信力あるのに!と文句を言った。

「大和は会社の広報なんかに収まらないで、ユーチューバーでも始めなよ。顔が良いんだから今以上にファンがつくよ」

 肩を叩きながら慰めた千早の言葉に大和はコロッと機嫌を直した。

「やっぱそう思う?なぜか営業先のマダム達に好かれちゃうのよね~」

 女子高生よろしくスマホケースに入れている鏡を見ながら前髪を整えている。俺はこんな頻度で鏡に映った自分の顔を眺めている男を、他に見たことがない。

 野菜や果物の加工食品を主に扱う会社に勤めている俺らは、新卒入社するとすぐに営業部に配属された。研修期間中に取引先の農家で1週間の農業体験を行う班が同じだったことがきっかけで、今でもこうしてよく飲みに行くようになった。農業体験の研修では昔ながらの土間と畳の家で寝食を共にし、まるで部活の合宿のような雰囲気に意気投合するまで時間はかからなかった。

「しかし、まさかの圭介が先に結婚かぁ。先を越された」

 愕然とした大和の隣に座っている千早がまぁまぁと諫めた。

「お前には可愛い彼女が2人もいるじゃないか」

「この前,、浮気がバレて全員にふられた」

「最低だな」

 そんな大和と千早のやりとりを無視して、俺は隣に座っている圭介にグラスを傾けた。

「結婚おめでとう。結婚祝いなにがいい?」

「ありがとう。なんでもいいよ。」

 心底幸せそうな同期の笑顔に、心からの祝福と羨ましいという気持ちがないまぜになる。

「俺も優太みたいにジム通おうかな。この体型じゃ結婚式みっともないもんね」

 りっぱに膨らんだお腹を両手でさすりながら圭介が言った。この最も気のいい同期は見るからに食べることが好きそうな体型をしており、期待を裏切ることなく本人の趣味は美味しいご飯を食べることである。

「自宅でのトレーニングでも十分ダイエットはできるよ。」

 俺はお勧めのトレーニング動画のURLをいくつかラインで送った。

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