第79話 優太_少しずつ知る、君のこと
「いい飲みっぷりですね。ビールがお好きなんですが?」
莉奈さんは笑いながら言った。莉奈さんが注文したレモンサワーはほっそりしたグラスに、レモンが入っておりなんとも女性らしくおしゃれな飲み物に見える。
「好きですね。さっきまでジムに行っていたので余計に美味しく感じます」
つい普段通りにビールをあおってしまったことに気恥ずかしさを覚えた。
「あ、だからリュック背負っていたんですね」
「そうなんです。」
「渋谷のジムに通っているんですか?」
「いや、チェーン店みたいにあちこちにあるので都合に合わせて通ってます。契約すると他の店舗も使えるんですよ」
残りのビールも飲み干し、追加のビールを注文する。
「私もジムに行ってるんです。ダイエット目的ですけど」
「そうなんですね。でもダイエットする必要ないじゃないですか」
「いやいや、運動してないと筋肉ってあっという間に落ちちゃうんですよ。シラカワさん、どのくらいジムに行ってるんですか?」
「俺は週2~3くらいですかね。行けれる限り行ってます。」
「どうりで筋肉質だと思いました」
クスッと笑う莉奈さんに、前回の役立たずだった自分を思い出して俺はわざと話を変えた。
「そういえば莉奈さん、どうしてこのお仕事されているんですか?」
レモンサワーを飲みながら莉奈さんは親指と人差し指で円を作り上に向けた。
「これです」
そりゃあ、お金を稼ぐことが目的だろうけど。
「ふふ、奨学金の返済を早めに終わらせたいからです」
俺はその理由に少なからずショックを感じた。奨学金の返済のために身売りをする。そんなことがあっていいのだろうか。
「やっぱり奨学金の返済って大変なんですね」
「いや、私はそうでもないですよ。」
事もなげに言われて、ちょっと混乱する。
「私が借りていた奨学金は利子がないので。普通に仕事してれば返済はそこまで大変じゃないです。ただ、返済期間が結構長くて。早めに返し終えたいので、週に何度かこのお店で働いてます」
「え、じゃあ他にも仕事しているってことですか」
「そうですね」
そこで料理と追加で頼んだビールが来た。莉奈さんが手際よくシーザーサラダを取り皿によそってくれる。俺はお礼をいい、何の仕事をしているのか尋ねた。
「WEBデザイナーです」
「かっこいいですね」
照れ隠しなのか肩をすくめるように笑うと、俺の仕事内容を尋ねてきた。
俺は食品メーカーの営業であること、ゴールデンウイークにはピザのイベント販売をやっている事など話した。
「え!あのトマトとニンニクソース作ってる会社ですか?わぁ、あれ私使ってますよ!パスタにかけると美味しいので良く食べてます」
自社製品が褒められるのは嬉しい。ニッコリ笑いながら引き続き料理について話す莉奈さんにつられて、俺も自炊の話や会社の同期の話、最近見つけた美味しいご飯の話等、会話が弾んだ。




