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第77話 優太_夏のカップシート

 久しぶりに渋谷にあるジムに行ったが、やっぱ人が多かったな。いつも通り、近所にある北千住のジムにすればよかった。シューズと室内着を詰めたリュックを背負いながら、莉奈さんとの待ち合わせ場所に指定した店に向かう。

 途中、窓ガラスに反射して写った自分の格好をみて、ちょっと後悔する。無難に白シャツにチノパンを履いてきたが、もっとオシャレな恰好してきた方が良かっただろうか。しかし、家のタンスには似たり寄ったりの服しかない。

 しょうがないと諦め、店に向かうと約束の時間15分前についてしまった。念のため、エレベーターの横にある案内図をみて、場所が間違いないか確認をする。入り口に戻り携帯を見ながら時間をつぶしていると5分ほどして、駆け足で近づいてくる莉奈さんが視界に入った。

「お待たせしてすみません。」

 頭を下げる莉奈さんに、慌てて両手をふって答えた。

「あ、いえ、全然待ってないので大丈夫です。急かしてしまったようですみません。」

 お互いペコペコと頭を下げながら、莉奈さんの姿を上から下まで眺めた。カーキ色のロングスカートに黒いレースっぽいシャツを着て、夏らしく麻っぽい生地の鞄を持っている。絵具をランダムに塗ったような黄色っぽいサンダルをはいていてオシャレだ。…今度、新しい服を買いに行こう。

「あの、生理中だとお酒飲めないかなと思って、ソフトドリンクの種類が多いところが良いかなと思ってここのお店にしました。10階に入ってます。」

 さっき確認したエレベーター横の案内図を指さしながら説明する。莉奈さんは微笑みながら軽く頭を下げた。

「ふふ、お気遣いありがとうございます。」

「それと、これをご確認ください。料金は事前にお店に確認しました」

 前回と同じ柄の封筒だと使いまわしてる感があるかな、と思い先ほどロフトで買った朝顔柄の封筒にお金を入れたものを莉奈さんに手渡した。莉奈さんは夏らしくてかわいいですね、と言うと中身を確認し鞄にしまった。

 エレベーターで10階に上がり、間接照明に照らされている入り口をくぐると、ウェイターに予約している旨を伝えた。

 事前にネットで調べた通り店内は広々としており、結構天井が高い。ムード満載の暗めの照明に、テーブルに置かれているキャンドルがいかにもデート向きのお店といった感じだ。

「こちらのお席へどうぞ」

 ウェイターに案内された席を見て、俺はぎょっとした。

 え、カップルシートじゃん!

 思わず他の席が空いてないか後ろを振り返ったが、テーブル席はいくつかあるものの、バーカウンターがあり、横並びで座る席の方が多いように見える。しまった。予約する時にテーブル席を指定すればよかった。

 しかし、今更席を変えてもらうのもばつが悪く莉奈さんが先に座れるよう手で誘導しながら、いやらしい男だと誤解を与えないよう俺はしっかり距離を取って隣に腰かけた。


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