第75話 優太_ため息と乾杯
圭介はウェイターを呼んで白ワインを注文した。俺と千早も同じものを注文する。
「しなくてもなんか満足なんだよね。一緒にいるだけで。別に裸にならなくっても、抱き合って寝てるだけで十分幸せだし」
「まじか。俺はまだその境地には至れないわ」
背もたれに深く寄りかかりながら、千早は天井を仰いだ。
「あ、何もしてないってわけじゃないよ?ハグしたりキスとかは普通にするよ」
「新婚に聞くことじゃないと思うけど、他の女を抱きたいとか思わないの?」
いや千早、それマジで新婚に聞くことじゃないよ?
「風俗に行くお金があったら美味しいもん食べたいんだよね。俺、他の男性に比べたら性欲少ないのかもしれない」
圭介は人の良い笑みを浮かべた。こういうタイプだから圭介の彼女は圭介と結婚したいって思ったんだろうな。そんな圭介を羨ましく思う。
「圭介は絶対浮気しないだろうな。いい旦那さんになりそう」
素直にそう思った。
「そりゃあ圭介は彼女にぞっこんですから。結婚するなら、圭介みたいなタイプが良いですよ、世の中の女性のみなさん」
「いやいや、誰に話しかけてるんだよ」
酔いが回り気味の千早にテーブルの端に置かれている水を勧めたが、ちょうど注文した白ワインが運ばれ、3人でグラスを傾けながら乾杯する。
「これからも優太の風俗報告、待ってるよ」
ニヤニヤしながら千早は肩肘をついている。
「お前な…」
「いや、俺は嬉しいんだよ。最近やたらとため息多いし、牧原さんと付き合った時は、ゆずが、ゆずが、ってすごくうるさかったのに、ここんとこ惚気話きかないしさ。優太は真面目過ぎるところがあるからさ、俺はちょっとホッとしてんの」
ワイングラスを揺らしながら、ニッコリ笑う千早に俺は心が温まるのを感じた。でもしょっちゅう、からかってくるから素直にありがとうは言ってやらない。
「…彼女さんとうまくいってないの」
遠慮がちに聞いてくる圭介に肩をすくめるだけで答えた。
しばらくテーブルの上に並んでいるアヒージョや、ポテトサラダ、唐揚げ等をつまんでいると、急に思い出したように千早がいった。
「そういえば今日、大和は?」
「なんか、あやちゃんって子と飲みに行くって言ってたよ」
最後のから揚げを美味しそうに食べながら圭介が答えた。
「え、ゆみちゃん、って子じゃない?」
つい先日、大和とランチを食べている時に、最近ゆみちゃんという子といい感じである話をさんざん聞かされた俺は首を傾げた。
「ゆみちゃんはアパレルで働いてる女の子で、あやちゃんはガールズバーの女の子だってさ」
事も無げに言う圭介に、感心のため息しか出ない。
「ほんとあいつ、すごいな」
「女性から見たら男としてクズかもしれないけど、雄としては花丸だよね」
ニコニコ笑いながら意外にも結構な酷評を圭介が言ったのであった。




