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第64話 優太_思ったより普通の人

「よろしくお願いします」

「ご丁寧にありがとうございます。かわいい封筒ですね。」

 ロフトで購入したひまわり柄の封筒をみて莉奈さんがほほ笑んだ。

 財布からその場でお金を出すのは生々しい感じがするし、かといって茶封筒に入れて渡したらよいのかもわからず、失礼にならないよう封筒を買ったが正解だっただろうか。

 莉奈さんは封筒の中身を確認すると、鞄にしまうと俺の向かいに座った。

「ふふ、緊張しています?」

 そう言われて、緊張感がさらに増した。

「あ、はい。こういうお店あまり利用したことなくって…。あ、これ、良かったら飲み物どうぞ。」

 鞄から先ほどコンビニで買ったお茶をテーブルの上に置いた。何を買えばよいのかもよく分からなかったので、麦茶と緑茶、どっちとも飲めない、なんて人はいないだろうと思いとりあえずお茶のペットボトルを買っといたのだ。

「お好きな方、どうぞ」

「ありがとうございます。私、どっちも好きです。白川さんどちらがいいですか?」

「あ、俺はどっちでも…」

「そしたら、せーの、で飲みたい方指さしません?」

 子どもみたいな提案に面食らったが俺は頷く。莉奈さんは真剣な顔をしてせーの、と言いお互い指さしたのは麦茶だった。

「あはは。やっぱ夏は麦茶ですよね。」

 おかしくてお互い笑いあう。すると莉奈さんはどうぞ、と言いながら俺に麦茶を差し出してきた。

「いや、莉奈さんのために買ってきたので。」

 慌てて差し戻すと、莉奈さんはニッコリ笑った。

「ありがとうございます今度お会いするときは私が麦茶をご用意しますね。」

 お互いどうも、とペコペコしお茶を飲む。緊張していた体が少し緩んだ。

「ここのお店、利用するのは初めてですか?」

「あ、はい、初めてです。」

 俺はかしこまって答えた。

「まだお若いですよね?25歳くらいですか?」

「あ、今年で29歳です。莉奈さん、お店のホームページに載っていた年齢よりずっと若いですよね?こういうお店って実年齢よりうんとサバ読むと思っていたので、若い女性がきてびっくりしました。」

「よく言われるんですがお店のホームページに書いてある年齢、あれ実年齢なんです。」

「え!そうなんですか?とても30歳には見えないです。年下かと思いました」

 25歳くらいだろうと見当を付けていた俺は目を見開いた。マジか、同じ会社で働いてる30歳くらいの先輩達の顔を思い浮かべたが、とても同年代には見えない。莉奈さんは嬉しそうに笑いながら、ありがとうございますと言った。

「シラカワさんみたいに若いお客様、初めてなので最初お会いした時にびっくりしました。すごい若い人来たなぁと思って。」

「あ、そうなんですね。何歳くらいのお客様が多いんですが?」

「だいたい40~60歳くらいが多いですね。たまに80歳の方もいらっしゃいますよ」

 その年代でも風俗って利用するのか。なんとなく若い人が持て余した性欲を発散させるために行くイメージがあったのだが、どうやらそうではないらしい。しかも80歳って、老人ホームに入っていてもおかしくない歳じゃない?

「え!すごいおじいちゃんじゃないですか。その年で性欲があるって凄いな」

「ね。お店に遊びに来るだけあってすごく若々しい方でした」

「あの、そういった高齢の方でもその…、できるんでしょうか?そういうことが」

 おじいちゃんと若い女性が睦会う、あんまり想像したくない光景だ。

「他の方はわかりませんが私を指名して頂いた80歳のお客様はおしゃべりを楽しみたい方でしたので、エロことをとにかくしたい!という感じではなかったです」

「ははぁ~。お金持ちの遊びなんだなぁ」

 ただ喋るためだけに風俗に行く。お金持ちの感覚はわからん。

「ほんとですよね。」

 あはは、と莉奈さんの声が室内に響く。

 予想していたよりずっと普通の人だ。むしろ、この人が風俗の仕事をやっているのか?ほんとうに?と思いたくなるほど普通だ。

 風俗嬢というのは露出の多い服を着て、女であることを前面に押し出しているものだと思っていた。

 しかし、莉奈さんはユニクロで売ってそうな無地のシンプルなワンピを着ていて、化粧も薄い。綺麗で可愛らしい人だな、とは思うがとても風俗嬢にはみえない。俺はホッとし、肩の力が抜けた。


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