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第59話 知夏_複数プレイの午後

「お客さんがホテルに着いたって。いこっか」

 サッと伝票をとると舞さんがレジへ歩いていく。慌てて後ろを追いかけながら財布を取り出した。

「あの、自分の分、払います」

「いいのよ、年下の子に出させるわけにはいかないでしょ。」

 いいから、と優しく背中を押されて先に店を出るように促される。私はありがたく好意を頂戴した。会計を済ましてお店を出てきた舞さんに頭を下げる。

「すみません、ごちそうさまでした」

「全然いいよ。ホテル、すぐそこだって」

 舞さんについていくと、そこは有名な高級ホテルだった。

「ここのホテルに女性2人呼ぶなんて、お金持ちなんだろうね」

「ですね」

 上品なロビーを抜けてエレベーターで18階へ上る。指定された部屋をノックするとガタイのいい中年男性が現れた。

「待たせて悪かったね。さ、入って」

 失礼します、と言いながら部屋に入るとキングサイズのベットが置かれており、かなり広々とした部屋だった。

「せっかく3時間コースで予約したんだけど、打ち合わせが長引いちゃってね。16:30からまた打ち合わせだから、16:00まででもいいかな?。料金は3時間分渡すから」

 ガタイがいいので怖そうな印象だったが、意外にも優しい言い方で拍子抜けした。時計をみるとちょうど14:30。90分の仕事で180分の料金がもらえるなんてラッキーでしかない。私は舞さんに向かって頷いた。

「大丈夫です」

 舞さんが答え、二人分の料金を受け取る。金額を確認して、お店に報告の電話を入れた。

「さて、どっちが舞ちゃん?」

「私です。」

 舞さんが元気よく手をあげた。

「じゃあ、君が莉奈ちゃん?」

「はい」

「俺のことは、まぁ、ムタって呼んで」

 良かったら座りなよ、とソファーを勧めてくれたので私たちはムタさんの向かいに腰かけた。

「莉奈ちゃん、若いよね?いくつ?」

 本日2回目の質問だ。

「今年で30です。」

「ってことはまだ20代?」

「はい」

「俺の娘とあんまり変わらないじゃん」

 ガハハハッ、と大きな声で笑いながら、背徳感やべぇな、とさらに陽気に笑った。

「ムタさん、私、莉奈さんと干支一緒なんですよ」

「ってことは42歳?おばさんじゃん」

「えー、ひどい」

「ってことは、舞ちゃんが42歳なら俺と干支が一緒だわ。俺もおじさんだわ」

 また、ガハハハッと笑う。その様子がおかしくて私たちも笑った。

「ムタさんは何のお仕事をされているんですか?」

「君たちと同業だよ」

 私の質問に手を組みながら、ムタさんが答える

「え、風俗のキャストですか?」

「こんなおじさんキャストなんかいないよ。風俗店運営してんの」

「へぇ!どこのお店ですか?」

「九州」

 東京へは観光ですか、と聞く舞さんに。いや、とムタさんが首をふる。

「東京に店を出そうと思ってね。その関係で来たんだけど、せっかくだから東京の女性と遊んでおこうかと思ってさ。ここのお店、初めて使うけどアタリだよ」

 アタリ、と言われて悪い気はしない。

「ちなみに君たちは複数プレイ経験は?」

「あります」

 はっきり答える舞さんの隣で頷く。

「ふぅん。女同士でやったことあんの?」

「ありますよ」

 あっけらかんと言う舞さんに、驚きの目を向ける。

「あ、バイ?」

「いえ、ストレートです。でも、昔、レズの子に告白されてさ。付き合うことはできないけど、女性同士ってどうやってやるのか興味があったから、何回か寝たことがあるだけです」

「へぇ、いいじゃん。莉奈ちゃんは?」

「…私はバイです。でも、そこまで経験してるわけじゃないです」

 ちょっと気後れして答える。女性経験が0ではないとはいえ、豊富な性体験があるわけではない。舞さんがどの程度の経験値なのかはわからないが、ベットプレイに入れば私の乏しい経験値をさらけ出す必要がありそうで恥ずかしい。

 このムタさん、おそらく複数プレイに慣れているんだろうな。私は男女関わらず、セックスにおいてはリードして欲しい派のため、できればリードしてくれるとありがたい。

「いいねぇ。莉奈ちゃんからみて舞ちゃんってどう?」

 ムタさんがニヤっと笑う。

「舞さんは綺麗でお姉さんって感じなので私のタイプです」

 そう言うと舞さんが歓喜を上げながら抱き着いてきた。

「やだ、何この子!可愛い!莉奈ちゃん、って呼んでいい?」

 もろに舞さんの胸に挟まれる。ちょ、やめて。冗談抜きでドキドキするから!

 そんな私たちを見ながら、ムタさんがのけぞるように笑い出した。

「いいね!いいよ!マジでアタリだわ」

 シャワー浴びておいで、と言われて私たちは交互にシャワーを浴びると一つのベットに集結した。複数プレイは今まで何度か対応したが、一番楽しいプレイだった。

 ムタさん持参のオモチャを使用し、お互い嬌声をあげながらベットの上を跳ねたり入れ替わったり、とにかくじっとしていることがない。

 そして舞さんの乱れっぷりはエロかった。女性の私から見てもエロいと思うのだから、男性からしたらたまったもんじゃないだろう。

 プレイが終わり、シャワーを浴びて着替えるとムタさんが分厚い財布を鞄から出した。ぎょっとするほど1万円が収まっている。

「2人とも良かったよ。これ、とっておいて」

 そう言って、私たちに3万円ずつ渡してきた。本番行為無しでこのチップの金額はさすがに受け取れず、断ろうとすると舞さんが、ありがたく頂戴しましょ、と言った。私は頭を下げて、ありがたく頂くことにした。

 また指名するね、と手を振るムタさんに手を振り返して部屋を後にする。

 エレベーターホールを待っている間、お互いの取り分の金額をそれぞれの鞄に入れた。

「この後、事務所にもどるの?」

「はい。舞さんは終わりですか?」

「今日は終わり!また複数プレイの仕事があったら莉奈さんとペア組みたいわ。」

「私もまた組みたいです。」

 一緒にホテルをでると、お互い手を振って別れた。

 仕事とはいえ楽しい時間だった。それにこんなにもチップがもらえて嬉しい。チップは全額返済に充てよう。


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