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第5話 知夏_私の風俗嬢ライフ

 私を指名してくる客のコース時間の平均は2~3時間。長い方だと5~6時間といった超ロングコースで指名されることも多々ある。おかげで1日に何人も客をとらなくても1~2人相手にしたら十分に稼げる。

 新人として入店した月の売上ランキングは断トツで私が1位であり、私の勤務態度、お客様からの評価を総合的に判断した藤本店長が、入店1か月を終えた頃に店舗の事務スタッフもやらないか、と提案してきたのだ。

「もちろんキャスト業務を最優先してもらって構わない。そっちの方が稼げるからね。待機時間に事務所で店舗の運営を手伝って欲しい。時給は高くはないが、待機時間でも稼げることができる」

 そう言われて私は即座に二つ返事をした。

 風俗嬢に転職して最初に驚いたことは、待機時間が思いのほか長いことである。私に人気が無くて客がつかずに待機時間が発生している、ということももちろんあるだろうが、待機室にいる他のキャストも、長時間待機していることに前にいた店で気づいた。

 今までの店は待機場所に漫画やテレビが備えられていたので、暇つぶしには困らなかったが、いつ客がつくかわからない状態で何時間も待機するのは、精神的にもしんどいものがある。忙しい時は忙しいが、暇な時は本当に暇なのだ。暇すぎて閑古鳥が鳴く、とはこのことか、などと思ったものである。

 ちょっとしたお小遣いを稼ぐのが目的なら、待機時間は休憩時間として過ごせたかもしれない。

 しかし、生活費と借金返済を稼ぐことを目標にしている私にとっては、待機時間はまさに時間の無駄としか思えなかった。そのため待機室にPCを持ち込んで、細々とライター業務を請け負っていたが、業界未経験のライターが書く記事は安いため労力と見合わないと感じていた。

 新人期間は指名が殺到しやすいため稼げるが、それが終われば確実に待機時間は増えることを経験上身に染みている。人妻専門渋谷店に入店して、最初の1か月間のうちにリピート客を何人か掴んだものの、継続して稼ぎ続けられる保証はどこもにない。

 頑張った分だけ稼げる世界だが保証がない分、文字通り自分で何とかするしかないのだ。

 藤本店長が提示した事務スタッフの時給は思ったより良かった。飲食店などで払われる時給よりは高くガールズバーの時給より安い、といった具合だった。

「キャストの収入に比べると安く感じると思うけど…」

 と肩をすくめながら言った藤本店長に私は笑って答えた。

「キャストの給与感覚に慣れてしまったら、普通の会社員には戻れないです」

 そう、私はこの言葉を常に肝に銘じていた。

 風俗嬢の収入は仕事の性質上高額なものになる。収入が増えれば生活水準を上げたくなるのが人間の性質、ただし一度上げた水準を下げることはなかなか難しい。

 幸いにもブランド品を身に着けたい、豪華な生活を送りたい等の欲望が私にはほとんど無い。 元々、物欲がそこまで強い性格ではないので、会社員の頃とは比較にならないほど高給取りになっても、毎日自炊を行い、古着屋かユニクロ、GUなどの店で服を買い、サイゼリヤのミラノ風ドリアに、半熟卵を追加するかどうかで悩む生活を相変わらず送っている。

 仲の良い友人である絵麻は私が風俗嬢に転職するにあたって、いくら借金返済のためとはいえ大反対をした。風俗嬢から一般企業に戻れなくなるのではないか、と心配を前面に押し出して説得を試みてくれた。

 もちろん弁護士に頼んで債務整理なり自己破産なり手続きを踏む選択肢もあるだろう。だが、自分のしでかしてしまったことは、自分で後始末をつけたかった。

 会社員から風俗嬢に転職するにあたって、落ち込む暇もないほど借金返済について頭が一杯だったことも幸いだった。おかげで精神を病むことなく、むしろ楽しんで風俗嬢ライフを送っている。


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