第46話 知夏_詐欺は本性を現さない
爆発的に売れるということはないが、毎月コンスタントに売れていく。私が納品している革製品は、名刺入れ、ペンケース、文庫サイズのブックカバー、小銭入れ、ブレスレットのラインナップがメインだった。
それ以外は依頼に応じて受注生産にしていた。なぜこんなにコンスタントに売れ続けているのか、納品しに行った時に店長に聞いたことがある。
「このお店のお客さんはオーナーの仕事関係者が良く来るの。ハンドメイド作家を応援したい、っていう人もけっこういらっしゃるし。一般のお客さんを集客をしなくても、オーナーの人脈で保っているのよ」
それを聞いてオーナーって凄い人なんだな、と素直に感心した。1年ほど経つ頃には、すっかり店長やスタッフと仲良くなり、日用品や雑貨を買いに良く訪れ、一緒に飲みに行くようになっていた。
納品をし始めて2年目が経った頃、セレクトショップに納品しているハンドメイド作家、スタッフ達を集めてオーナーが運営しているカジュアルイタリアンのお店を貸切にして、立食パーティーが行われた。
人生初めての立食パーティーに内心ビビりながら先輩の後をついていくと、参加していた人達は皆気さくで明るく、20代の女性ばかりだった。
ハンドメイド作家の全員が仕事をしながら創作活動に励んでおり、趣味でやっている人もいれば本気でハンドメイド1本で食べていくことを目標にしている人もいた。店長やスタッフだけでなく、お店のホームページの制作者やECサイトの運営者、オーナーの仕事関係者など総勢30名程が参加していた。
そのパーティーは大いに刺激的だった。その場で仲良くなったお店のホームページの制作者は、モデルかな、と思うほどきれいな女性だった。
彼女は私と2つしか歳が違わないのにウェブデザイナーとして既に独立して生計を立てていた。そんな彼女はシャンパングラスを揺らしながらこう言った。
「会社員として仕事している時も楽しかったけど、独立してからの方がずっと楽しいよ。仕事に対する責任感も全然違うし、気の合う仲間と次はどんなことをやるのか話し合うことは、すごくワクワクするよ。それに仕事を通して色んな人とあうから、それが刺激になって自分のデザインに反映されるしね。作っているものは全然違うけど、何かを生み出すことを生業としている点では私たち同じだね。ここのオーナーからは良く色んな仕事を回してもらってるからお世話になっているんだ。」
当時の私は、この言葉がひどく印象に残った。自分と大して歳が変わらぬ女性がジャンルは違えどモノを生み出す仕事で、独立している姿は純粋にかっこいいと思った。
私はいいお店に納品できて良かった、と心の底から思い、絵麻を誘った。絵麻は私とサークルの先輩の納品先、ということに興味を持ちオーナーを紹介したが、結果は納品しない、だった。理由を聞くと、「私、あの人とは合わないと思う」と、何とも抽象的な理由だった。しかし、今思えば絵麻の直感は正しい。
お店に毎月納品しながら、年に2~3回のペースで絵麻と共同でハンドメイドのイベントに出店した。そんな生活が3年続いた頃、将来的にはハンドメイドで食べていきたいと思うようになっていた。




