第40話 知夏_戦略が形になる瞬間
この3点を実行したおかげで移動中の読書、映画を見ながらストレッチや軽い筋トレを行う習慣が身につき、都内にあるおしゃれなカフェやレストランに少し詳しくなった。
ジム代も含めて毎月の美容費用は家賃の倍近くに上がったが、お金をかけた甲斐があり、何回シャワーを浴びても肌がカサカサになることなく、ファンデーションを塗らなくても人前でさらけ出せるほど、素肌のコンディションが整った。
ジムに通って3か月たつ頃にはボディラインにも変化が現れ、店舗のスタッフの方や新人の頃から通ってきてくれるお客様から「痩せた?」と言われることが増えた。
美容にお金をかける分、服や鞄などのアイテムはユニクロやGU、古着でコストを抑えるようにしたが、下着だけは安っぽいものをつけるわけにはいかないので、ワコールで派手すぎないものを購入し身に着けた。
そして、靴はダイアナのパンプスかサンダルをはき、全体に安っぽく見えないように工夫した。
顧客リストに誕生日の記載があるお客様には、誕生日が近くなればデパ地下でちょっといいお菓子を購入し、サプライズでお祝いをした。
体が疲れているというお客様にはYouTubeで見て学んだ指圧のマッサージを行い。心身ともに癒されて帰って頂くようサービスを心掛けた。
そして様々なお客様と会話を弾ませるために、テレビのニュースだけで情報収集を済ましていたのを止め、アプリで経済新聞を読みビジネス雑誌を読むようになった。
全く分からないジャンルの話を振られたときには知ったかぶりをせず、徹底的に聞き役に回り、次回指名された時に備えて調べものに明け暮れた。
その甲斐あって、入店半年後には売上ランキングが10位に上がり、会社員時代の月収を倍にしても余裕で超えるほどの収入が、本指名だけで賄えるようになった。これに新規からの指名を加味すると、にやけてしまうほど収入が上がる。
目に見えて収入に変化があると俄然やる気がでてくる。実践したことが収入に反映される面白さに気づいた私は、さらに本指名数を増やすべく毎月の総指名数の内、本指名数が占める割合を計算し毎月記録するようになった。
先月より本指名数が占める割合が増えれば、その原因を考え継続して実践し、先月より本指名数が占める割合が下がればその原因を考え改善した。
入店して1年たつ頃には売上ランキングでも、本指名数ランキングでも5位以内の成績を常にキープできるようになり、新規の指名数よりも本指名数の割合が多くなった。
しかし、売上ランキングでは目標だった愛花さんを超えられるようになったものの、本指名数ランキングでは圧倒的に愛花さんが首位をキープしており、私はいつも2~5位の間をウロウロしていた。
目標である愛花さんを完全に追い抜くことはできないものの、安定した収入基盤が出来上がったことに安堵した。もちろん、今の成績に胡坐をかくわけにはいかない。
今月の努力が3カ月後の売上の基盤になると心掛け、努力は怠らないように常に自分に言い聞かせた。
毎月の借金の返済額を大幅に増やしても、多少は貯金できるだけの余裕ができた。そして私は人生で初めて仕事にやりがいを感じるようになったのだ。




