第37話 知夏_本物の人妻が勝ち続ける理由
私は実際に愛花さんに会う前に、愛花さんの写メ日記を読み漁った。愛花さんは出勤日数に関係なく週1で写メ日記を更新しており、内容は自身の日常を綴ったものばかりだった。
最近食べた美味しいご飯、子どもと一緒に作ったクッキー、お客様から頂いたお土産について等々。とても風俗店のホームページに載っているとは思えないような、一般的な主婦が書いているブログ内容だった。
本指名数が多い他のキャストも、日常についてを書いているキャストはいるが愛花さんの写メ日記の方が明らかに内容が濃く、それでいて愛花さんの人柄が伝わってくる。
そして、文章能力の高さが伺えた。その文章の上手さは他のキャストの写メ日記と読み比べた時に明らかに際立っており、書き手が知的で、なおかつ思いやりに溢れた人柄であることを想像させるものだった。
私は愛花さんの写メ日記を読み漁るうちに、純粋に愛花さんに興味を持った。移動時間もお客様が閲覧する用のホームページにアップされている愛花さんの写メ日記を遡って読み、新しく写メ日記がアップされるのが楽しみになるほどファンになった。
きっと多くのお客様はこの写メ日記をみて愛花さんに会いたくなるのだろう。
しかもラッキーなことに、愛花さんは振込清算ではなく、毎回事務所で清算を行うキャストだった。キャストの清算は基本的に店長が行うが、店長の手が離せない時はスタッフが対応する。愛花さんが清算に来た時、私は藤本店長にお願いをして清算を対応させてもらった。
愛花さんを初めて対面した時、「え、この人が…?」と疑問を抱いてしまうほど容姿は超普通だった。
高めの身長にやや細身。服の上からでも胸は小ぶりであることがうかがえた。一重瞼の日本人らしい顔立ちで、どちらかといえば地味な顔立ちである。以前、話をしたホステスのように華やかな容姿の持ち主で話術に優れている人、と勝手に思い込んでいただけに拍子抜けした。
容姿の点では予想が外れたが、話術のスキルは高かった。短い時間でも感じ取れる頭の回転の速さ、相手をリラックスさせるような柔らかい雰囲気、なにより聞き上手であった。
愛花さんは興味を持って私のネイルやスキンケアの話を聞いてくれた。聞き上手相手だと、こうも話すのが楽しいのか、と驚きの発見だった。清算時、キャストとここまで雑談が盛り上がったのは初めてだ。私はすぐに愛花さんが人として好きになった。
聞き上手なだけではなく、愛花さんは女性としても魅力だと思った。世間一般的に見ても優れた容姿のキャストなら数多くいる。しかし他のキャストが持ち合わせていない雰囲気を兼ね備えていた。
それは子供の母親であり、誰かの奥さんでありながらも、女である、思わせるような雰囲気だ。やはり置かれている立場がそうさせるのだろうか。女の私から見ても女に見える、それは外見が女にみえるというより雌という言葉の方がしっくりきた。
数多くの常連を抱え続けられる理由が、少しわかったような気がした。人妻専門店を利用するお客様は、愛花さんのような家庭がにじみ出るような女性と楽しみたいのだろう。
私は愛花さんを目標とすることに決めた。最大の理由は本指名数が断トツで多い点が挙げられるが、それと同じくらいルックスにおいても近しいものを感じた。




