第25話 知夏_一粒のチョコレート
事務スタッフとして働き始めて1か月、キャストとして2か月が経ったころ、新人の頃に比べると多少収入は下がったものの、そこそこの売上は維持できていた。しかし、ずっと今の売上を維持できるか自信が無く、不安が芽生え始めた。
そんなある日、藤本店長や他の店舗の店長たちが、行きつけのお店に連れて行ってもらった時のことだ。
私はそこで初めて、プロのホステスの接客を受けた。落ち着いた雰囲気を演出するためか、暗めの照明しかないにもかかわらず、私の隣に座ったホステスは色白で肌がきめ細かく整っており、一体維持費にいくらかけているのか聞きたくなるほど、髪がとぅるんとぅるんであった。久しぶりに同性の美しさにドキマキしつつ、大いに気後れしていると、そのホステスが自身のポーチから飴玉のように包まれているチョコレートを一粒私にくれたのだ。
その時ホステスが何を言ったのか覚えていないが、そのチョコレートがとても美味しく、どこで買えるのか聞いた事は覚えている。その時に教えてもらったお店は私のお気に入りの一つになり、お客様にちょっと贈り物をする時によく利用するようになった。
チョコレートのおかげで少し緊張がとけ、お酒がみんなの体に入る頃にはしゃべり散らかしている藤本店長が卓を盛り上げ、私は声を出して笑った。
トイレを済ました私を、隣に座っていたホステスが出迎えてくれた。その時、そのホステスが私と同じくらいの身長しかないことに気づいた。ピンヒールの靴を履いているから高く見えるだけであって、水商売の中では低身長にあたる。
私より若く見えるのに、年上と一緒にいるような、受け止めてくれるという安心感を彼女はまとっている。どのようにして、そのような雰囲気を醸し出せるのか非常に気になった。ホステスは優雅な仕草で「知夏さん、どうぞ」と言いながらホットタオルを差し出し、私は初めて男性の気持ちになって女性の接客を受けた。




