第23話 優太_理想の恋人とは
川越の観光地のど真ん中をゆずの手に触れない距離を意識しながら隣を歩く。
ゆずを抱きしめられないからといって、嫌いになるということは無い。ゆずの話を聞いて、ずっと好きだった人のことを深く知れたとこに喜びを感じ、ゆずのことを誰よりも理解して受け止められるだけの器が大きな人間になろう。その時そう思った気持ちは今でも変わらない。
大学の頃から、ゆずを見てはずっといいなと淡い恋心を抱いていた。
しかし、恋心に気づいた時にはすでに気の合う飲み友ポジションが確立しており、別れては付き合うを繰り返しゆずをみていると、ずっと友達のままの方が仲良く過ごせるのでは、と学生の頃は考え、別の女性と付き合っていた。
しかし、仕事でばったり出会いやっぱり好きだな、と片思いを1年半も続けた末、ようやく付き合えた。そうそう簡単に別れるなんて考えられない。
だが、千早に言われた通り一人で処理するには限界を感じていた。どうしようもなくフラストレーションがたまり、人肌の恋しさに涙が出ることも増えた。認めたくはなかったが、俺はゆずとこの距離感を保ち続けたまま付き合い続けることに限界も感じていた。
ゆずがノンセクシュアルではなく普通の女性だったら、そんなしょうもない妄想を繰り広げては、ゆずを一番に支えられる人間になろう、という理想の俺が声を上げる。
また、手をつないで歩くカップルが目に入る。それを目で追っているとゆずが、ねぇねぇと声をかけてきた。
「お昼何食べたい?」
「そうだな。せっかく川越にきたから名物食べたいよな」
物思いを振り払い、せっかくデートしているのだから楽しもう、と言い聞かせる。
「お蕎麦か、それか太麺やきそばがソウルフードみたいだよ。あ、さつま芋が有名だから、さつま芋のスイーツは絶対に食べたいな」
SNSでサクサクと情報収集している。綺麗にネイルで整えた指先が踊るように携帯の上をすべる。俺もゆずの携帯を覗き込みながら言った。
「そしたら蕎麦食べて、食べ歩きしない?」
「いいね!そうしよう」
パッと顔を上げたゆずと至近距離で目が合う。180cmを超える身長のせいで、女性と至近距離で目が合うことがほとんどない。目の前にあるゆずの顔へ思わず手を伸ばしかけ、そのまま首の後ろに置いた。




