第181話 優太_この瞬間だけは
有楽町駅前のロータリーは多くの人が行き交っている。待ち合わせの10分前に到着し、俺は人通りを眺めた。自分でも心が弾んでいるのが分かる。
手の中にある携帯が振動し、非通知から着信がきた。少しだけ緊張しながら電話にでる。
「もしもし」
『あ、もしもし?今どこらへん?』
「今、マルイの入り口のところ」
どこにいるのだろうと目線をめぐらしていると、左手方面から知夏が手を振りながらやってきた。久々に会う彼女にドキドキしながら俺も手を振り返す。
「久しぶり」
知夏の挨拶に俺も、久しぶり、と返す。
赤茶のニットのロングワンピースに、丈の短い黒の上着を着ている。普段より体のラインが出てる服装に女らしさを感じた。いや、ちょっと体のラインが出すぎてないか?その服装で他の客に接客してるの?
「…なんでそんなエロい服着てるの?」
「えぇ?エロくないよ?肌の露出してないもん」
確かにニットのロングワンピースは丸襟のため肌の露出がほとんどないが、 形の良い胸がくっきりと浮き彫りだ。
「上着の前、閉めたら?」
完全に彼氏目線で言ってしまった俺の言葉に、知夏はショックを受けたようだ。
「え、そんなに見苦しい?」
「いや、そう言うわけじゃないんだけど…」
もごもごという俺を無視して、不満げに唇を尖らせて上着の前のチャックを閉めた。
「これで良い?」
「うん」
素直に言うことを聞いてくれる彼女に微笑むと、手を取って歩き出す。
「優太のスーツ姿、初めてみた。かっこいいね。」
お世辞でも口が緩むのを止められない。ありがとう、と返す。
「どこ行くの?」
「飲みに行こう。お腹空いてる?」
「空いてる!」
指を絡めて手を繋ぐと、新橋方面に向かって駅の高架下沿いにある居酒屋を見ながら歩いた。 水曜日なのでまだどの店もすぐに入れそうだ。
「あ、ここのお店美味しそう。」
知夏がビストロ系の居酒屋の前で足を止めた。
「ここにする?」
「んー、もう少し他も見てみよう。」
そう知夏は言い歩き始める。少し離れたところに良さげな日本食の居酒屋をみつけて、どっちがいいか知夏に聞いた。
「最初に見つけたお店かな。家じゃ作れないメニューばかりだったし。」
「確かに」
自炊生活あるあるの発言に笑った。外食する時に迷ったら自炊するにはめんどくさい、もしくは作れない物を選ぶ気持ちはよくわかる。
今来た道を戻り、先ほど知夏が気になっていたビストロ店に入った。落ち着いた照明の店内は女性客が多く、壁にはワイン瓶のコルクで作られた絵が飾られている。2人掛けのテーブルに通されると、荷物入れに上着と鞄を置いた。




