第155話 知夏_三週間後の約束
「…駅まで送るよ」
私の腰に腕を回しながら優太が答えた。我慢して偉い。「えらいっ」と言いながら思いっきり彼の頭を撫でた。
「…やっぱり、ちょっとだけ買い物に付き合って。」
「いいよ。」
買い物やご飯くらいならいくらでもいいよ、私はそう心の中でつぶやいた。
駅に向かう途中、優太お勧めのドーナツ屋で買い食いをし、ルミネとマルイを回った。優太は新しい鞄が欲しいとのことで、鞄をメインで見て回りながら、私が気になったお店に都度寄っていく。
優太との買い物は楽しかった。途中から私が見たいお店に付き合ってもらい、真田店長が使用していると教えてくれた無印のスキンケアを見に行った。テスターで感触をためしながら、転職したらリーズナブルな無印に切り替えようと思った。
優太の足取りが気持ち遅くなった。私はもう少し一緒にいた方が彼も喜ぶかと思い、夕飯に誘った。優太は嬉しそうにほほ笑むと、何を食べたいか話し合い、優太のおすすめの鶏白湯ラーメンに連れて行ってもらうことになった。
そこのラーメンは今まで食べた鶏白湯のなかでも群を抜いて美味しかった。私はすっかり無言で食べ、優太が追加でオーダーしたミニチャーシュー丼を少し分けてもらい、飲めるだけスープを飲んだ。さすがに優太のようにスープを飲み干すことはできなかったが、水筒に入れて持って帰りたいぐらい美味しかった。
パンパンに膨らんだお腹をさすりながら、店を出て一緒に駅に向かう。千代田線の出入り口で、優太は私に帰ってほしくなさそうな素振りをした。
私は優太が何か言いたそうだったので待ったが、黙っているので「こらこら、時間外労働」と笑った。残念そうな寂しそうな顔で「だよね」と言う優太の顔をみると切ない気持ちになる。
そういう感情は是非とも彼女だけに向けて欲しい。その気持ちに全力で答えられないことが逆に辛い。
話題を変えようと思い私は来週末、法事で帰省するから何かお土産買おうか、と提案した。
「実家、埼玉だっけ?何が有名なの?」
「椎茸かなぁ。あとは苺とか」
すると優太は驚いたことに、私の地元の名産である苺の品種を口にした。
「それって、あまりんの苺?あ、実家って秩父?」
「え、よく知ってるね?なんでわかったの?」
驚きのあまり声が裏返った。あまりんの苺は確かに名産品だが、認知度が高いイメージではない。
「食品会社勤めだから」
得意げにどや顔で言った優太に笑った。地元がバレてしまったが、まぁいいや。
「じゃあ、しばらく会えないね」
「そうだね。来週は私が予定あるし、再来週は優太が予定あるし」
「はぁ…。3週間後の週末空いてる?」
優太がため息をつきながら私を抱きしめた。
「空いてるよ」
「予約する」
「ありがとう」
「またね。実家でゆっくりしてきて」
3週間後にまた、と優太が言い、私は手を振りながら駅のホームへ向かった。




