第150話 知夏_二人の食卓
家に着くと早速お鍋の準備に取り掛かった。
白菜、ネギ、大根は優太の実家から送られてきたものを使い、その他はお互い好きな物を入れる寄せ鍋にした。優太は鶏肉やシイタケなどのキノコ類を選び、私はちくわぶと餅巾着を選んだ。
「やっぱりその具材はおでんじゃない?」
キッチンに並べられたちくわぶ、お餅を目でやりながら優太は言った。私は彼の隣で大根を桂むきしながら、目線を動かすことなく答えた。
「まぁ、そうなんだけど、モチモチしてて好きなんだよね」
「というかピーラーがあるよ。桂むき、大変じゃない?」
「いつもこうしてるから大丈夫」
「家庭的だね」
「普通だよ」
桂むきを終えた大根をいちょう切りにしていると、隣で彼が小さく笑ったので手を止めて見上げた。
「いや、一緒に料理するとさ、お互いの知らなかった一面が知れるから楽しいな、と思って」
「喜んでもらえたようで何よりだよ」
私もそう思う。優太は一人暮らし歴が長いだけあって料理上手だ。彼は旬の食材を使うことを好み、けっこう凝り性でもある。お昼に作ってくれたサラダにかけるドレッシングは、なんと手作りであった。
具材を一通り鍋に入れて後は煮込むだけになった。優太はキッチンの隅に置いてある段ボールの中から茄子を取り出すと、煮びたしでもいい?と聞いてくる。私はもちろん、と答えた。
「野菜、たくさんあるね」
私は段ボールに入っている野菜を覗き込んで言った。
「実家からしょっちゅう送られてくるんだよね」
「へぇ。実家って農家なの?」
「いや、普通のサラリーマン。庭で家庭菜園をやっているだけだよ」
茄子に細かく切れ目を入れながら優太は答えた。私は彼の手元を見て感心した。均等に切れ目が入っている。
「包丁さばき、上手いね」
彼は嬉しそうに笑いながらフライパンに茄子を並べた。
ローテーブルに鍋用の卓上コンロ、なすの煮びたし、取り皿にコップとお箸を並べるとかなりパンパンになってしまった。
お互いビールを開けて乾杯をする。
「お誕生日おめでとう」
「ありがとう」
鍋は昆布から出汁を取っただけあって優しい味がした。自分で作る鍋より美味しく感じる。一番好きなちくわぶばかりを器によそうと、優太が爆笑した。
「ちくわぶばっかり拾って食べるじゃん。子供みたい」
「だってこれが好きなんだもん」
私はばつが悪くなってキノコや白菜もよそった。
私は楽しくていつもよりお酒が進んだ。常連客が連れて行ってくれるいいレストランも素敵だけれども、私はこうやって一緒に鍋をつつきながら、テレビをみて笑いながら缶ビールを飲む時間の方がずっとずっと好きだった。
バラエティー番組で北海道の観光地が取り上げられているのを見て、私は、あっ、と声をあげた。
「ここ、前に優太が動画で見せてくれた湖じゃない?」
「あぁ、支笏湖ね」
カヤックに乗った芸人がパドルを漕いでいる様子を見ていたが、ふと隣を見ると真顔でテレビを見ている優太に気づいて私はどうしたのだろうか、と訝った。
「…追加のお酒、持ってこようか?」
「いや、大丈夫。まだ半分残ってるから」
持っている缶を揺らしながら優太が答えた。私は箸を置いてできる限り穏やかで、優しい声が出るように意識して言った。
「どうしたの?何かあった?」




