第149話 知夏_暮れていく時間
気が付くと優太がほほ笑みながら私の頭を撫でている。終わった後でウトウトしてしまっていたようだ。下半身が痺れたようにだるく、心地よい感覚だった。
「ごめん、ちょっと寝てた」
「全然いいよ。ごめん、疲れさせちゃった?」
「ううん、よかった」
優太は嬉しそうに私のおでこにそっとキスをした。言葉ではなく仕草で気持ちを伝えてくれることに、温かい気持ちになる。
「お腹すいてる?お昼なに食べたい?作るよ」
「誕生日の人にご飯を作らせるわけにはいかないよ」
私は笑いながら答えた。
「せっかく来てもらったんだから、おもてなしさせて」
「じゃあ、パスタ食べたい」
「いいよ。得意料理」
ニッコリ笑いながら起き上がると、優太は服を着てキッチンに向かった。私も着替えを済ませると何か手伝えることは無いかと、優太の周りをうろついたが、ソファーに座らされてしまった。
優太お手製の大根おろしとツナに紫蘇を散らした冷製パスタとサラダを食べながらサブスクで映画鑑賞をし、他愛ない会話を繰り広げ、夕飯は一緒にお鍋を作って食べることになった。
せっかくの誕生日なんだからもっといいものを食べよう、と提案したが、一緒に買い物に行って料理したい、と優太が言ったので、スーパーに買い物に行った。
買い物袋をぶら下げて荒川の土手を散歩がてら歩き、一緒に夕日を眺めた。近隣の学校の野球部だろうか、威勢のいい声が河川敷に響いている。
「綺麗だなぁ」
夕日の光を受けて縁が金色になった雲がたくさん浮かんでいる。
「ちょっと待って、写真撮りたい」
繋いでいた手を離すと、私は携帯で夕焼け空を写真に撮った。携帯で撮るとどうしても、この感動まで切り取ることができないのが残念だ。
優太が、あのさ、とためらいがちに言った。
「…一緒に写真撮らない?夕日を背景にしてさ」
「夕日を背景にしたら逆光になっちゃうよ?」
「それでもいいよ」
優太はインカメラにすると少しかがみ、私は精一杯背伸びしてカメラに収まる。彼が撮った写真は想像通り逆光になっていたが、十分二人の表情はわかる写真だった。
もうすぐ今日が終わる。夕日をみてこれほど切ない気持ちになることは無かった。私たちは夕日を見ながら再び手を繋ぎ、家路をゆっくりと歩いた。




