第15話 知夏_人妻との疑似不倫を楽しむために
人妻専門渋谷店は『人妻と一時の不倫を楽しむ』ことをコンセプトにしているだけあって、演出も徹底している。まずは営業時間が10時~19時であること。今まで在籍してきた店の営業時間は24時間営業のものもあれば、10時~23時と営業時間が長かった。
店舗を移るにあたって多くの求人を見てきたが、夜遅くまで営業している店舗がかなり多い中、10時~19時はかなり短く感じた。もっと長く営業すればそれだけ売り上げが上がるだろうに、なぜこの時間帯でしか営業しないのか店長に聞いたことがある。すると店長はこう答えた。
「子持ちの人妻は子供の帰宅に合わせて、夕飯を作らなきゃいけないでしょ。旦那や子供がありながら夜遅くまで不倫できるなんて、リアルじゃない。旦那が仕事に行っている間に、子供が学校に行っている間にそっと家を抜け出すからリアルなんだよ。」
それを聞いて私は思わず唸ってしまった。なるほど。確かに言われてみればその通りだ。
渋谷店に在籍しているキャストのほとんどが現役の人妻かバツイチ子持ちだ。そのため、夕方18時頃にはほとんどのキャストが退勤してしまう。
最終営業時間の19時までいるのは私のように独身や、バツイチ、もしくは子供が既に社会人で家から自立している人くらいで数は少ない。
ちなみに先ほど営業時間が10時~19時と記載したが、これは正確に言えば受付時間である。受付時間とはキャストを予約できる時間のことであり、19時がプレイスタートの最終受付時間だ。もし19時に指名が入ったとすると最短で90分コースのためプレイ終了時間は20時半になる。
そこから清算業務をおこない締め作業があるので、実際に店が閉店するのは早くても22時頃になる。しかし、夕方からキャストを指名するお客様は多くはないので、キャストとしても事務スタッフとしても夕方以降は割と暇である。
10時になるとお店のホームページに営業開始したことを告知する。1時間に1回の頻度でSNSとお店のホームページに今すぐ指名できるキャストを1名ピックアップし、目立つようにアピールを行う。
そして、求人サイトとお店のホームページの口コミにサクラとして書き込み、その合間に鳴り響く電話の対応を行い、指名が決まればパソコンに打ち込んでいく。
どのキャストがどこで待機していて何時から予約可能なのか、どんどん変化していくので、どの店舗にもキャストのシフトを管理するためのモニターが1台ずつ設置されていた。エクセルのような表で、縦列ごとにキャストのスケジュールが把握できるようになっており、キャスト名の下の欄には待機場所の最寄り駅が記載されており、10時、10時半、11時と30分ごとに横に線が引かれている。
予約が入るとキャストの名前をクリックしプレイ開始時間、コース時間、顧客情報、場所を入力し保存すれば予約された時間マスの中に〈渋谷 90分〉といった具合に表示される。
予約可能な時間帯は黄色で表示され、予約が入ると水色になる。そのため少しでも黄色い割合を減らすことを目標に指名獲得本数を増やしていく。
ちなみにデリヘル業界ではお客様からの指名数を、人ではなく本で数える。前のお店にいた時に店長に理由を聞くと、デリヘルは手と口を使って相手を射精に導くのが仕事のため、人ではなく男性のモノの本数を数えるから、と言われて、なるほど、と納得した。
しかし、ここでは、必ず、人で数える。理由を藤本店長に聞くと「お客様は人間だから」と、至極当たり前な返答が返ってきて、確かに、と笑ったものだ。




