第144話 優太_ビールで乾杯
飴色のテーブルに着き、メニュー表を開くとビールの種類だけで見開きページが埋まっている。種類が多すぎてどれを頼めばいいのか分からなかったので、とりあえず初心者にお勧め、と書かれているビールを選んだ。それぞれバラバラに注文したビールが運ばれてくると大和が携帯で写真を撮り始めた。
「SNS用?」
「いや、さきちゃんに送る証拠写真」
「なにそれ」
「さきちゃんって誰?」
「ちょっと、みんなそのゴツイ手でグラスつかんでもらっていい?」
俺らの質問をフルシカして大和が言った。カシャとシャッター音が聞こえ、送信っと、と呟いてからケータイをテーブルに置いた。
「待たせてごめん、乾杯しよ」
大和がビールを掲げて、ヤロー共の気楽な飲み会に乾杯!とやけくそのようにいった。なんだそれ、と笑いながらグラスをぶつけ合う。
「さきちゃんって誰?」
先ほどスルーされた質問を圭介が大和に向けた。
「営業事務の子。いい感じだったんだけどなぁ」
「あー、この前、上野で飲んだ時に言っていた子?」
「そう。」
千早が電子タバコを出しながら思い出したように言った。目をきょろきょろさせて灰皿を探しているが、圭介に、ここ禁煙だよ、と言われ残念そうにすごすごと鞄に戻した。
「今日、会社の同期と飲みに行く、って言っても信じてくれなくてさ。だから証拠写真送った。」
めんどくさそうなため息をつく大和に、俺はやれやれと思いながら言った。
「いや、実際疑われることやってるよね?」
「でも俺なりに大事にしてたんだよ?俺、さきちゃんとは合わないかも。風俗すら浮気認定してくる」
「実際二股かけてるじゃん?」
「だって30歳までは遊ぶって決めてるんだもん!」
駄々っ子のような言い方に失笑でしかない。
「お前、一途な子と結婚するとか永遠に無理だな」
千早が鼻で笑いながら言うと、すかさず大和が言い返す。
「一途な子を見極めるために、今、女の子を見る目を養ってるの。」
そんな大和にニコニコしながら圭介が言った。
「そのためにはまず大和が一途にならないといけないんじゃない?」
ド正論である。あまりにもその通りすぎて笑ってしまった。
これにはさすがの大和も、30になったら心を切り替えるよ、とちょっとふてくされたように言いビールを飲んだ。ま、遊べるうちに遊んだほうがいいよね、と心優しい圭介はすかさずフォローし、どんなに女の子と遊んでいるのか尋ねると、大和は生き生きと嬉しそうに話している。
前に圭介が、大和は男としてはクズだけどオスとしては花丸、といった評価を裏切らず、知らない女の子の名前がポンポン出てくる。
ホント、感心するよ、と笑っている千早を見て、そういえば千早はセフレとどうなったのだろうと気になったが、大和と圭介が知っているか分からなかったので聞くのは控えた。
翌日から仕事なので2軒目はいかず早めに切り上げると駅まで向かい、それぞれ手を振りながら解散した。




