第143話 優太_同期からのアドバイス
『優太はチノパンと白いシャツしか持っていない。180cmもあるのに身長の無駄遣いだ』
と言い出した大和の発案で洋服を買いに同期4人組で下北に来たわけだが、友人との服選びは思いのほか楽しい。
決してチノパンと白いシャツしか持っていないわけではないのだが、言われてみれば人に会う時はだいたいチノパンにシャツを着ている。そこまで服に興味はないので、新しい服を買うとしてもなんとなく似たようなものしか選ばない。そして、今着てる服もチノパンに白いシャツだ。
俺は大和が選んでくれた服と、圭介が持ってきたピザのTシャツをもってレジに向かった。会計を済ませると、千早と大和は秋物の新作コーナーで服を選んでおり、圭介はその隣にある帽子の棚でハンチング帽子を見ている。
「会計終わったよ。」
そう声をかけると千早が、どっちがいいと思う?と女子みたいに2つの服を見せてきた。ゆずみたいだな、と思いつつ千早が持っている服を見比べる。青っぽいまだら模様のニットと、黒の三つ編み模様のセーター。
「今の季節ならこっちじゃない?」
俺は青い方のニットを指さした。
「でも、冬に着たいならこっちじゃない?」
と圭介。大和は、どっちも買えば?と横から言っている。うぅーん、とうなりながら千早は手に持っている服を見比べた。
「やっぱどっちも買うわ」
「えぇ、聞いた意味」
「ちょっと待ってて」
レジに向かう千早を見送りながら、圭介が言った。
「千早って結構クールなところあるけど、ああいうところ、女の子見たいで可愛いよね。」
「だな。」
笑いながらも、午前中に行った美容院で大失敗に終わったパーマが気になりすぎて、前髪を引っ張った。
職場の先輩がパーマをかけているのを見てそのカッコ良さに真似をしたのだが、美容師の腕が微妙だったのか、それとも俺の髪質が悪いのかわからないが想像していたパーマとはだいぶ異なり、もっさりした仕上がりになってしまった。明後日、莉奈さん似合うのに最悪だ。
今日、みんなと合流した時には「失恋してイメチェン?」と千早にからかわれ、「まぁ、髪の毛なんてすぐ伸びるよ」と圭介に慰められ、「前の方がよかったな」と大和の容赦ない一言に「俺もそう思うよ」と心底後悔した。
「あとで一緒にドラックストア行こうね」
そんな俺を見て慰めるような、子供に言い聞かせるような口調で圭介が言う。若い子たちが良く使う、ぴえん、という気持ちだ。
千早の会計が済むと古着屋やセレクトショップなど巡り、パーマが少しでもマシにセットできるよう途中でドラックストアに寄った。
男子高校生のようにワックスのコーナーの前に固まって、どれがいいのか見ていると大和が2~3個選んでくれた。
「ワックスは水分を含むとすぐにうねりが出ちゃうから、ツヤがでるワックスよりドライ系のワックスが良いよ。ドライヤーする時になるべく髪の毛伸ばしながら乾かした方がいいかも」
さすが美容に気を使っているだけあってアドバイスが分かりやすい。
「彼女と誕生日旅行にいくんでしょ。頑張って」
慰めるように肩をポンポンと叩いた大和に曖昧に笑い返した。
ゆずの一級建築士の試験が終わったら、俺の誕生日プレゼントを兼ねて旅行に行く予定である。しかし、ゆずとの旅行を忘れたわけではないが、この髪型を見られてゆずにどう思われるかという心配は全く心に浮かんでいなかった。ただただ莉奈さんにカッコ良く見られたい、という気持ちだけが俺の心を占めていた。
購入したワックスを鞄の中にしまい、圭介が行ってみたいというクラフトビールのお店に移動した。夕方になれば涼しい風が吹き、だいぶ過ごしやすい。圭介のペースに合わせててくてく歩いていくと、いい雰囲気の店に着いた。




