第13話 優太_彼女との関係を保つために
会社が自社製品を販売するための店舗を計画した時に、内装を手掛けたのはゆずが勤める建築会社だ。社会人3年目に俺と千早の指導係だった先輩が店舗事業に携わっており、打ち合わせに参加させてもらったときにアシスタントとして来ていたのがゆずだった。
ゆずとは元々、大学のサークルが同じでずっと飲み友達で、よく共通の友達と一緒に飲みに行っていた。社会人になってからはゆずと共通の友達を交えて飲んでいたが、仕事で関わるようになってから千早とも何度か一緒に飲んでいる。
広報部に異動になった千早なら、今、社内で持ち上がっているテイクアウト専門店の事業が本格的に始動し始めたら、ゆずと仕事上で会う機会があるだろう。イベントや常設展示など、内装が必要な時には毎回ゆずが勤めている会社に依頼をしている。
「仕事でゆずと一緒になったりする?」
「いや、今のところ直接のやり取りはないかもな。俺、HPとかSNSがメインの担当になりそうだから」
SNSだったら絶対に大和が適任だよな、とぼやきながら目線で、それで?と問いかけてくる。
「…実は俺たちも千早と同じような感じ」
「あー、レスってこと?」
声を落として聞いてきた千早に黙って頷く。
「それは…お互いしんどいな」
さらに黙って頷く。
「ちなみになんでか聞いても?」
遠慮がちに首を傾げて尋ねる千早に頷いた。
「…ゆずはあんまりそういうのが好きじゃないみたい。」
流石に付き合ってからもうすぐで2年たつというのに、一度もやっていないとは言えなかった。
「そっか」
しばしの沈黙。お互い黙って酒を飲む。
「優太、風俗行って来いよ」
「はい?」
つい裏声が出てしまい、慌てて口を閉じた。
「いや、冗談とかじゃなくて真面目な話。やりたくてもやれないって結構ストレスたまるでしょ。」
肯定しかけたが、認めるのもなんか嫌で中途半端に首を縦に振りかけた。
「彼女持ちだろうが妻子もちだろうが、俺は風俗にいくのはアリだと思うんだよね。やっぱり、心の余裕って一人で生み出すには限界があるし、フラストレーションがなければ夜もぐっすり眠れるし」
意外な本音にハッとなる。
「眠れないことがあるの?」
「昔の話。彼女とレスになって、はけ口がなかったころはね。今はセフレのおかげでぐっすり快眠だよ。少しは気持ちに余裕ができるようになったしね」
「そっか」
「俺、一時期セックスのことばっかり考えちゃってさ。大和の様にオープンスケベにはなれないし、圭介の様に彼女に一途に尽くすこともできないし、本来大事にすべき彼女も大事に扱えないし、好きな人に対して1年程度で性欲が冷めちゃうし。俺って冷たい人間なのかな、って結構真面目に悩んでた。」
千早とは今まで数えきれないほどサシ飲みをしている。お互い本音で色んなことを語り話してきた。でも、こんな風に寂しそうに自らの弱音を言う姿は初めてだ。
「でも、悩んでもしょうがないし、これが俺なんだよなって認めたら開き直れたわ。おかけで今は割り切ってやれるようになったよ」
新しく電子タバコを加えながら、気遣うような真面目な視線をよこしながら言った。
「優太は真面目だからさ、彼女がいるのに他の女と関係を持つなんてとんでもない、って思うかもしれないけど、その彼女との関係を良好に保つためにも他の女性の力を借りることは、決して悪いことじゃないと思うよ」




