第127話 優太_普通にしか見えないラブホテル
ラブホとは思えないリゾート感溢れる内装に、思わず目を丸くする。おしゃれなピアノの曲が流れており、なにより受付カウンターが普通のホテルで見かけるような作りになっている。
ラブホの受付といえば、手元しか見えないスペースで鍵とお金のやり取りを行うイメージである。しかし、受付にはキッチリ髪を結んだ若い女性が姿勢よく立っており、いらっしゃいませ、と笑顔を向けてくる。
「ここって、え、そういうホテルであってる?」
こっそり聞く俺に、事もなげに莉奈さんは頷く。
受付の女性がカウンターの横に設置してあるパネルを手で示しながら、「こちらでお部屋をお選びください」と案内してくれる。値段ごとに部屋の写真が並べられており、下に行けば行くほど値段が上がる。
一番安い部屋でもいつものホテルに比べると少し割高だ。一番下に表示されている部屋の値段に目を向けると、え!高っ!
でも、せっかく来たしな、と思い一番いい部屋を選ぼうとすると、横から手が伸びてきた。俺の手をつかむとそのまま一番上の方まで持っていく。
「そんな高い部屋はお金がもったいないよ」
「でもせっかくだから。」
と、双方譲らない。
「じゃあ、この真ん中あたりにしよ?」
折衷案に頷く莉奈さんの手を握り、空いてる方の手で入りたい部屋を選んだ。
すぐにカウンターのスタッフから「こちらへどうぞ」と声を掛けられ、お会計を済ます。ニコニコと満面の笑みで鍵を渡されてなんだか気恥ずかしい。
莉奈さんに連れられてケーキコーナーに行くと、意外にもちゃんとしたケーキが並んでいた。
ショーケースの中に陳列されたケーキはすでに一つ一つお皿に乗っており、お盆に乗せて運ぶことができるようになっている。莉奈さんはフルーツタルト、俺はチーズケーキを選び、コーヒーをカップに注ぐとお盆に乗せエレベーターに乗り込む。
エレベーターを降りると、ふかふかの絨毯が敷かれている廊下をすすみ部屋に入る。部屋は広々としていて、ベットの前には大画面のテレビが備え付けられており、ソファーもテーブルもゆったりとくつろげるだけの大きさとスペースが備えられていた。
莉奈さんがお店にラインで報告を入れている様子が携帯の画面からチラリと見えた。「支払いカードにしたんだね」そう聞く彼女に頷き返す。
鞄から追加料金を入れた封筒を取り出した。北海道旅行で買ったシマナガエが描かれている封筒。それを莉奈さんに渡そうとすると、怪訝な顔をされた。
「今日、カード払いしてるよね?お金はもうもらってるよ」
「それとは別のやつ」
俺が言うと莉奈さんは、あ、という表示をする。
「それはもう大丈夫。いらないよ」
「え…」
なぜだ?
動揺を押し隠そうと努めて冷静に言った。




