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第125話 知夏_ハッピーな説得は不要です

「おい、真田ァ、お前、莉奈さんを説得しろよ」

 ちょうど後ろを通りがかった真田店長を呼び止め、藤本店長はがっくりと肩を落とした。

「ありのままを話しただけですよ。」

「もっとこう、ここで働きたくなるように、いい感じにハッピーに説明してさぁ」

「それ、ブッラク企業がやることですから」

 真田店長はあきれたように笑った。藤本店長に会長からの提案を辞退する旨を伝えると、藤本店長は漫画のように目を見開いて背景にガーンという文字が見えそうな勢いで衝撃を受けていた。

「莉奈さんってちゃんと数字にこだわって仕事するじゃん。俺はそういうこだわりをもった人と働きたいんだよ」

 チクショウ、とブツブツ言いながら珍しくいじけている。強面で圧が強めな藤本店長のいじけている姿は新鮮だ。そんな藤本店長を慰めるように真田店長は言った。

「大丈夫、莉奈さんならどこででも上手くいきますって」

「あったりめぇよ!優秀な莉奈さんだぞ」

 吠えるように言う店長に、私は両手で顔を隠した。

「店長、ありがたいけど、流石に恥ずかしいです」

 会長には電話で、辞退したい旨とその理由を正直にお伝えした。会長は明らかに残念がっていたが、快く私の意思を尊重してくれた。

 これでともかく、転職活動の方向性がある程度決まった。エージェント探しを初めて約1か月。あと数日で9月が終わる。やっと私が理想とする普通の生活に向けて動き出せることに心が弾んだ。


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