第123話 知夏_水商売から店長へ、42歳の決断
「真田店長はどうして店長になろうと思ったんですか?」
「そりゃあ、お金よ。稼ぎがいいもの。」
当然、といったように笑っている。
「ずっとキャストとして働くのは無理。50歳くらいで閉経したら濡れにくくなるし、どんなに外見を若く保とうとしてもベッドプレイは限界があるのよね」
もつ煮をつまみながら真田店長は言った。食べてね、と私に勧めてくれるので、私もちょこちょこつまみながら話を聞いた。
「キャスト歴は長いんですか?」
「そうね。通算で14年くらいかな。色んなお店にいたけど、最終的には今のお店が一番長いかな。」
「どのくらいですか?」
「7年、在籍してた。」
「長いですね」
「川崎店の前の店長がいい人だったのよ。結構なおじいちゃんだったけどね。川崎店がオープンした時に入店したんだけど、待遇はいいし、客質もいいし、店長は親身に話を聞いてくれるし、働きやすかったわ。」
「前の店長、どうしてお店辞めちゃったんですか?」
私の問いに真田店長は自分の胸を指さした。
「心臓の病気。元々持病があったみたい。もういい年だから引退したい、ってことで会長が新しい店長を探して藤本さんを引っ張ってきたの。前の川崎店長が知り合いに頼んで、藤本さんを会長に紹介したのよ。ちゃんと自分の後釜を用意するなんで、責任感ある人だなと思ったよ。」
「すごいですね。辞める時に自分の後任を用意するのは会社の仕事、って考えるのが普通ですよね。」
「まぁ、私たちは契約上は業務委託だから。実質は会社員みたいなもんだけどね。」
ちょうど焼き鳥が運ばれてきたので、焼きたてのレバーを頂いた。
「おいしい!」
「でしょ」
思わずつぶやいた私に満足そうに真田店長は笑った。
「結局、藤本さんは渋谷店を担当することになって、その時に会長が私に声をかけてくれたの。まぁ、前の店長に、この先キャストとして働き続けることは難しくなってくるからどうしよう、って相談してたから、たぶん口添えしてくれたんだと思う。その時、42歳だったんだけど、子供たちは食べ盛りだし稼がないといけないから、私にとってはありがたい話だったかな。私の職歴ってほとんどが水商売だから、40過ぎて子どもを養えるだけの普通の仕事に就くのは難しいからさ。」
「え!お子さんいるんですか?」
「いるよ。息子が3人」
とても子供が3人もいるようには見えない。今年で50歳と聞いてはいるが体つきは私たちとあんまり変わらない。綺麗に整えられた横顔をみてその美貌の秘訣を知りたくなった。
「とてもお子さんがいるようには見えないです。あの、スキンケアとかは何を…?」
「ずっと無印。そんな高いもんを使わなくても、健康的な食事と適度な運動と、ちゃんと睡眠をとっていれば十分だよ。」
いやいや、それでその美貌が保てたら苦労はしない。
「羨ましいです」
同じ女としていつまでも若々しく、美しさを保っている真田店長を素直に尊敬した。




