第115話 優太_終わりゆく夏と答えのない問い
遠ざかっていく旭川空港をゆず越しに窓から眺めながら、時間の流れの速さに驚く。窓側に座っているゆずも同じように窓の外の景色を眺めていた。
「あっという間だったね。」
大きなあくびを手で隠しながら、ゆずは座席をほんの少しだけ後ろに倒すとDEKKAIDO帽子を深くかぶった。どうやら眠る体勢に入ったらしい。俺はおやすみ、と小声で言うと、座席前に置いてあるフリーペーパーになんとなく目を通す。
今日訪れた青い池と旭川動物園公園が紹介されており、楽しかったな、と早くも思い出になってしまった今日を振り返る。
そう、確かに今回の旅行は終始楽しかった。しかし、何かが物足りない。彼女との旅行、というより気の置けない友人との旅行、と言った方がしっくりくるのだ。
相手に触れず性的魅力を感じず、それは親友との付き合いと何が違うのだろうか。
しかし、ゆずが思いっきり心の底から楽しそうに過ごしているのを目の当たりにすると、これがゆずにとって一番いい形なのかもしれない。だが、ゆずにとっての理想とする関係性が、果たして俺にとっての理想と一致するのかどうかについては、無視できないほど疑問が芽生えている。
数か月前までは、この関係を続けていくのに限界を感じていた。ずっと自分の欲望に目を伏せ続けて行くのは無理だった。おそらくこの先もそうだろう。
このまま、他の女性に相手をしてもらいながら、ゆずと付き合い続けるならどこかのタイミングでゆずに伝えた方が良いのではないだろうか。いや、性的な話題、下ネタすら避けたがるゆずのことだ、わざわざ言う必要もない。
しかし、はたしてこれが正解なのだろうか。




