第112話 優太_支笏湖とデッカイドウの帽子
2日目はカヤックをするために支笏湖に向かった。
支笏湖につくと、予約時間まで余裕があったのでお土産屋を覗いた。北海道らしくアイヌ民族にちなんだ雑貨や、北海道にちなんだTシャツなどが売っている。
「ね、優太、見て。このキャップ帽可愛いよ」
ゆずが指さした帽子をみると、黒地に白い刺繡で『DEKKAIDO』と書かれている。
「デッカイドウってホッカイドウのもじりだよね。帽子欲しいって言ってたじゃん。お揃いでこれ買わない?」
まじか、と思ったがキラキラしている目を向けてくるので断るのも野暮だろう。
「いいよ。せっかくだし。」
やった、と言っているゆずと帽子を試しにかぶってサイズが合うか確認する。お互い会計を済ますとその場でかぶってお土産屋を出た。ディズニーランドで頭につけるキャラクターの耳のような感じだ。つけたことは無いが。
周りを見渡せば、意外とお土産屋で売ってそうなTシャツや帽子をかぶっている人がけっこういる。ここが観光地だからかもしれない。
結果的には帽子を買って大正解だった。
支笏湖でのカヤックは真夏の日差しが思いの外強く暑かった。しかし、わざわざ北海道まで来たかいがある。驚きの透明度だ。底が透明になっているおかげで足元もよく見えた。カヤックの影が湖の底に沈み、浮いているような錯覚を覚える。
インストラクターのカヤックの後ろに続きながら、沈没船や倒木を観光していく。
二人乗りのカヤックで、前に座っているゆずのオールの動きに合わせながらゆっくり漕いでいく。時折、魚が足元を泳いでいる。帽子のおかげで日差しに目を細めることなく景色を堪能することができた。
カヤックの体験が終わり記念写真を撮ってもらうと、お昼ごはんに名物のヒメマスの丸焼きを食べた。もちろんそれだけでは足りず、トウモロコシの丸焼きやホタテの串焼き、ザンギを食べ、デザートにソフトクリームを食べると満腹になった腹を抱えて駐車場へ向かう。
「今からいけば夕方には着きそうだね。」
俺は腕時計で時間を確認し、運転席のドアを開けた。
「ちょっと待って。私が運転するよ」
車に乗り込もうとする俺の目の前に手をだして、ゆずが言う。
「旭川まで3時間だよ?ずっと運転しちゃうと疲れちゃうでしょ。交代しながら運転しようよ」
「3時間くらい大丈夫だよ。ゆずは試験で大変だろうから、ゆっくり助手席に座っててて」
「ここに来るまで優太が運転してくれたから、今度は私に運転させて」
「じゃあ、高速に乗ってパーキングエリアで休憩したら交代しよ」
「…わかった」
車の運転くらい頼ってほしいんだけどな。そう思ったが、心の中にしまった。しぶしぶといった様子で助手席に乗り込んだゆずが、扉を閉めたのを確認してエンジンをかける。カーナビに目的地を入力してくれている間に、サングラスをかけた。
「あら、イケメン」
「ども」
ほめられると素直に嬉しい。
車を発進させ高速道路に乗ったところで、カラオケ大会をしよう、とゆずにいうと、ノリノリで音楽をかける準備をしてくれる。ゆずの携帯を車のBluetoothにつなぎ、ランダムで曲を流していく。
米津玄師、ヨルシカ、キングヌー、サカナクション、Ado、優里等々、どの曲も聞いたことがあるものばかりだが、フルでは歌えないので知っているところだけ歌い、あとは適当に歌う。一通り最近の曲を歌い終わると時代を遡ってピンクレディーやビートルズ、ザ・ブルーハーツを歌った。
車内はカラオケ大会状態になり、喉がカラカラになったところでサービスエリアに寄った。
「ひっさびさに歌ったわ」
楽しそうに鼻歌を歌いながら、紙パックにストローをさしている。サービスエリアのお土産コーナーには数種類の牛乳があり、北海道と言えば牛乳だよね、ということでそれぞれ違う種類の牛乳を買い半分飲んで交換した。東京で飲む牛乳より濃くて甘いような気がする。
「やっぱり、北海道の牛乳って濃くて美味しいよね」
俺が思ったことを読み取ったかのように感想を口にするゆずに笑って頷いた。
運転を交代すると今度は俺の携帯をBluetoothにつなぎ、よく聞いている芸人のYouTubeを流した。二人組のテンポ良い会話が流れ、車内に笑いがはじける。




