第110話 優太_ツインベッドの距離
部屋に戻る頃にはお互いほろ酔い状態で、笑いの沸点が異常に低い状態だった。何でもないことにひとしきり笑い、早めにお互いのベットに入る。
「おやすみ」
窓側のベットに入りながらゆずが言う。俺も自分のベットに入りながらおやすみ、というと間接照明を消した。
すぐにゆずの寝息が聞こえてくる。俺は首を右に向けてゆずが寝ている方に目を向けた。恋人同士なのにツインベッドで別々に寝る。
今までならこの状況に寂しさばかりが募っていた。だが、今は心穏やかにゆずの寝息を聞いていられる。
ゆずがノンセクシュアルだと知ってから、一度も俺の部屋に泊まりに来ていない。旅行に行っても必ず別々のベットで寝たがった。一度だけ、旅行先の宿泊先を決める時に、寝ている時に触ったりしないからダブルベットで一緒に寝ないか、と提案したことがある。
しかし、ゆずはすぐ隣に人がいると落ち着いて寝れない、と申し訳なさそうに言った。それ以来、寝る時の話題はしなくなった。
すぐに眠りにつくのがもったいない気がして、楽しすぎてあっという間に過ぎた今日を振り返る。
まるで大学時代に戻ったかのような気安さで笑い、同じ時間を共有した一日だった。ゆずもすごく楽しそうで良かった。ゆずが望んでいた距離感を保ったまま、俺も寂しさや、心の澱を感じることなくこの関係を続けることができそうでホッとした。




