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第10話 優太_正直すぎる男

 注文したドリンクとつまみが運ばれてくると、俺と千早は黙ってグラスをぶつけ合う。

「にしても圭介が結婚かぁ。羨ましいわ」

「え、千早も結婚考えてるの?」

 意外な発言にチーズをつまむ手が止まる。

「いや、結婚が羨ましいというかラブラブなんだろうな、と思ってさ」

「ラブラブって、千早も彼女いるでしょ」

「まぁ、そうなんだけどさ」

 浮かない顔で2本目の電子タバコを吸う千早に、俺は心持ち声を潜めて尋ねた。

「あんまり上手くいってないの?」

「いや、この前、親に紹介したいって言われた」

「なんだ。いい感じじゃん」

「いや~」

 前髪を片手でかきあげながら肘をついて電子タバコを吸う姿は様になっている。色黒でハーフと間違えられるくらい彫が深い顔立ちは、男の俺から見てもイケメンの部類に入ると思う。

「俺ら、セックスレスなんだよね」

 セックスレス、ずっと心の中を占めている関心事に過剰に反応しすぎないよう、慎重に言葉をえらんだ。

「あー、それはなにか問題があって?」

「問題があるというか、なんというか…」

 珍しく歯切れが悪い。

「俺のやる気スイッチが入んないの。」

 ため息をつきながらモスコミュールを飲む千早に、つられて俺もグラスを傾けた。

「だから、今はセフレとやってる」

 思わず吹き出しそうになったハイボールを慌てて飲み込んだら、変なところに入った。思いっきり咳をし、深く息を吸う。

「大丈夫?」

 千早の質問を無視して俺は聞かずにはいられなかった。

「え、どういうこと?やる気スイッチが入らないのにセフレがいるの?」

「やる気スイッチが入らないっていうのは、彼女に対して入らないだけであって他の女性にならスイッチはすぐに入るよ」

 あっけらかんとした言い方はいっそう清々しい。よっぽど俺が、は?という顔をしていたのだろうか。弁解するように千早が肩をすくめた。

「別にあいつに対しての気持ちが無くなったってわけじゃない。情もあるし大事にしてやりたいとは思うよ。でも、そういう気持ちが湧かないんだよね」

「…どうして?」

「それがわかったら苦労しないよ。」

 2本目の電子タバコを吸い切ると本体に戻して充電させた。俺はその様子を見ながらチーズをつまみ、自分が経験したことのない話を理解できるよう想像力を膨らませる。

「セフレはどんな子なの?」

「可愛いよ。素直によく俺の言うことを聞いてくれる」

 いったい千早がセフレとやらに何をさせているのかは、聞かないことにしておこう。

「あの子はね、俺のテンガちゃん」

「いや、その言い方さすがにどうかと思うぞ。」

 千早はハハ、と笑いながら煙を出す

「そうやって割り切っておかないと、どうしたって情が湧くだろ。」

「…セフレと彼女の違いってなに?」

「そうだな…。トキメキかな」

 トキメキ。普段の千早とはイメージが異なりすぎる単語に、失礼ながらも思わず笑ってしまった。

「あのね、俺だってときめいてドキドキしてラブラブしたいのよ」

今度はアハハと気にすることなく肩を揺らして笑った。

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